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Tuesday, December 5, 2023

How to utilize open innovation for small and medium-sized enterprises (SMEs)

新規事業の創出やデジタル化(DX推進)に課題を抱える中小企業向けにオープンイノベーションの効果的な活用・手法について解説する、東京商工会議所主催のオンラインセミナーが4月13日に開催されました。
同セミナー内にて、スタートアップとのオープンイノベーションプラットフォームを運営するCreww株式会社代表取締役CEOの伊地知氏による講演が行われたので、その内容をレポートします。
speaker
伊地知 天(いじち そらと)氏 Creww株式会社 代表取締役CEO

・15歳単身渡米
・21歳、カリフォルニア州立大学在学時に起業
・7年間で3社創業、2社売却(アメリカ、フィリピン)
・2011年に帰国し、2012年にCreww創業
・新経済連盟幹事、J-Startup委員、などスタートアップエコシステム形成やオープンイノベーションの普及に関わる活動に広く従事

Crewwを立ち上げた背景

Ijichi:私は15歳のときに一人でアメリカへ行き、高校、大学へと進みました。大学時代に会社を作り、その後売却。それからフィリピンへ行ってまた会社を作って売却し、2011年の震災のときに日本に戻ってきました。

日本へ戻ってきて新しく何かをやりたいと考えた結果、人口が減っていくなかで、次の産業を作ったり、新しくチャレンジをする人たちを増やすことが必要だと考え、そのサポートを目的として、2012年にCrewwという会社を立ち上げました。

今はスタートアップエコシステムをしっかりつくっていく、あるいはオープンイノベーションを普及させていくといった活動にあたっています。また楽天の三木谷さん率いる、新経済連盟という経済団体や経産省がやっているJ-Startupの委員もやっています。

現在注目しているスタートアップサービス

Ijichi:本題に入る前に、私が個人的に好きなサービスをいくつか紹介します。

First,「Ecosia(エコシア)」という検索エンジンのサービスですが、これはドイツ(ベルリン)のスタートアップで、彼らはひたすら植林をしているんです。(サービスサイトの)右上に木のマークがあって、40回検索すると、木のマークが1になります。

ヨーロッパは環境意識が高いので、グーグルを使って検索する代わりに、「Ecosia(エコシア)」で検索すれば、木を植えることができるということが好意的に受け入れられ、すでに植えられた木は現時点で125,545,935本にも上ります。

だいたい40回検索したら、1本植林できるということがしっかり計算されているので、40回検索すると、「あなたの代わりに1本木を植えます」という成果がもたらされるんです。

今まで木を植えるのは、寄付のようなボランティア活動が多かったけれど、彼らの場合は広告収益で売り上げを立てて、そのうちの大きなポーションを植林に充てることで、持続可能なモデルを作っているわけです。

SDGsをどうやってビジネスに絡めていくか、と考えたときに、誰かが我慢することなく、無理なく回る世界というのを、こういった工夫で作り上げているというのが非常に参考になるケースだと注目しています。

もうひとつ好きなのは、「スマートコンタクトレンズ」を作っているアメリカのスタートアップです。これは、ものすごく薄いディスプレイが入っているコンタクトレンズになります。

会った瞬間にその人の名前が出てきたり、道案内をする矢印が出てくるなど、いわゆるARやVRの領域の話になりますが、データが現実世界に重なって見えるようなレンズを作っている会社です。

それを今商用化しようということで、どんどん進めているんですけれども、コンタクトレンズの部分を共同開発しているのは、なんと日本のメニコンさんなんですね。

まさしく、海外のスタートアップの先進的なサービスと、今まで日本国内で培われてきた技術が掛け合わされて、新しい市場をつくろうとしているという、非常に良い例だと思います。

このような取り組みが今世界中で行われています。必ずしも大企業だけがオープンイノベーションに参画できるというわけでなく、本来であれば中小企業でも新しい取り組みに参画できる状況なのですが、実際はなかなか一歩が踏み出せていないというのも事実です。そのあたりの考え方や心理的なハードルなどについて、少しお話させていただければと思います。

イノベーションのマクロトレンド

Ijichi:デジタル化がどんどん進んでいるなかで、変化をしなくて良い組織・会社は、ほぼないと言えます。要は次の5年、10年、このまま既存事業をずっとやっていくだけで右肩上がりに成長していける時代ではなくなっているのです。

すべての会社・組織がデジタル化によって変革していかなくてはいけないのは、非常にごく自然な、当たり前の話だということですね。

ですので、デジタル化によって社内の生産性を向上させたり、効率化したり、また既存事業をアップデートしたり、新規ビジネスをつくるといった動きをどこの会社でもやっていらっしゃる状況だと思います。

その変革をどのようにやるかというと、自社だけでどんどん推進できる会社さんもありますが、一般的な大多数の会社さんに関しては、自社だけでは、なかなか推進できないのが実態ではないかと思います。

その原因としては、社内にデジタルに詳しい人材がそんなに多くなかったり、あとは今まで培われてきた、既存事業を行うために最適化されてきた組織や価値観、文化に、新しいものをどんどん入れていくことが難しいという問題もあります。

DX推進や新規事業創出を低コストで確実に推進するには

また、外部の人といっしょにデジタル化を進める場合、受発注の関係ではなかなかうまくいかないと言われています。なぜなら受発注の場合、要件定義をする発注側がまずデジタルリテラシーについて詳しい必要が出てくるからです。つまり、成果が発注側のデジタルリテラシーに依存してしまうThe first is the

お互いの得意分野を持ち寄り、Win-Winの関係を作る、いわゆる共創で推進するのであれば、デジタル化や新規事業創出にすごく大きな予算を用意する必要はなくなります。みんながトクする座組をつくることで、低コストで確実に推進できるようになるというわけです。

短期的なゴールは、新しいビジネスを次の1〜2年で作るといったことで良いのですが、中長期的に目指すべきゴールは、新しいことを自分たち発信でどんどん、継続的に生み出していくための組織をつくることだと言えます。

そのためには独自のノウハウを社内でしっかりためて、再現性のある、持続可能なモデルをつくることが重要であり、会社にとっての、オープンイノベーションや新事業創出に取り組む本来の意味合いだと思います。

組織に持続可能なイノベーション体制をつくるには

プロセスとしては、まず目の前の新規事業をつくることを経て、はじめて中長期の階段を登っていくことになりますが、今まで10年間、いろいろな企業さんとご一緒してきて、うまくいく会社さんと、うまくいかない会社さんがいらっしゃいますので、その違いについてお話したいと思います。

うまくいく会社さんのマインドセットは、中長期的なゴールに向かって、どれだけ自分たちが前進しているのかということを念頭に置いていらっしゃる場合が多いです。

一方で、うまくいかない会社さんというのは、新規事業創出やデジタル化というものを、単発のイベントのように捉えていたりします。例えば来期、売上が50億出るビジネスを作れるかどうか、みたいな判断軸で成功の可否を決めてしまうのです。

現在、自社だけでなかなか推進できないデジタル化や新規事業創出を、外部の企業といっしょに進めていく会社さんが増えていますが、やはり中長期的に自社の組織そのものをアップデートしていくことに主眼をおかれているケースが増えています。

共創相手としての、スタートアップとは

Ijichi:では、デジタル化や新規事業創出を誰といっしょにやるのかと言いますと、選択肢はいくつかあります。

「オープンイノベーションの共創相手の人気ランキング」というアンケート結果がいろいろなところで出ているのですが、アメリカなどを見ると、やはりスタートアップ企業というのが、7割を占めています。

日本においては、スタートアップ企業と新しいことに取り組むという例は本当に少なくて、2〜3割程度にとどまっています。ではどことやっているのかというと、現状多いのは大学なんですね。企業と大学によるオープンイノベーションは何十年も前から行われているのです。

それはそれで今まで通り進めたら良いのですが、欧米でどんどん新しい産業が生まれている現状を考えますと、日本においても、スタートアップとの協業を、もう少し広めて行きたいという風に思っております。

ここで「スタートアップとは何か?」についておさらいすると、「非常に先進的なITベンチャーです」という説明になると思います。ただベンチャー企業は2種類あって、1つはスタートアップ企業、もう1つはスモールビジネスというカテゴリーに分けられます。

これはスタイルの違いで、スモールビジネスは、すでに確立している市場の中で新たに始めるベンチャーで、中長期にゆっくりと安定的な成長をしていくモデルのことです。例えばコンサルティング会社、ウェブ制作会社、デザイン会社、SEO会社、人材派遣会社などがそれに当たりますね。

一方、スタートアップの方は、確立していない市場で戦っています。存在するかどうかもわからない市場を“ある”と信じて、プロダクトを作り、外へ出していくというスタイルです。

ほぼ前例のないことをやっている人たちが多いので、銀行融資を受けるのは難しく、代わりにベンチャーキャピタルやエンジェル投資家、最近だと事業会社さんによるCVCなどへ自社の株式を渡して、資金調達をして、急速に実験と検証、サービスのブラッシュアップを進め、成果物を世に出し、多くの人に使ってもらって、売上が初めて立つといったモデルになります。

そして資金調達を何回かしながら、最後は株式上場や事業売却といったところを目指します。0から1をつくって、1を50にして、みたいな企業スタイルなんですね。

日本にスタートアップが何社あるかと言うと、経産省のWEBサイトによれば、だいたい1万〜1万2000社ぐらいということになっています。そのうち、5,300社が僕たちの運営しているプラットフォームに登録してくれていますので、全スタートアップの約半数が登録しているWEBサイトを運営しているのが、Crewwという会社になります。

スタートアップの例をご紹介しますと、例えば「W0TA」という、災害用シャワーパッケージを販売している会社があります。

すでにいろいろな行政で導入されていますが、でもこれは仮の姿でして、彼らの技術の本質というのは、水質の汚れをAIなどの機械学習により、ソフトウェア側でしっかり認識し、濾過を繰り返すことで水を再生させるという、新しい形の濾過技術を持っていることなんです。

彼らは、サニタリー問題で亡くなる方が多いというグローバルな課題意識を持っていて、今は100Lの水で50回ぐらいシャワーが浴びられるという製品をつくっているのですが、本当は「同じ水を何百回も再生できるようにして、最終的には飲料水にまで変えていく」というのがゴールなんです。さらに最近ではJAXAさんと組んで、「宇宙の水問題を解決しよう」、みたいなこともやっています。

目指している世界を実現するために、今の仮の姿があるわけで、パッとみたときに、「シャワーブースの会社だ」と思ってしまうと、もうそれ以上、そのスタートアップとの協業の仕方がわからなくなってしまいます。「本当に彼らが目指していることは何なのか」とか、「技術の源泉は何なのか」というのをよく見てみると、「自社と組んでこういうことができないか」という新しいアイディアが生まれてくることもあるはずです。

このように、スタートアップの本当の価値を見極めるのは非常に難しいのですが、付き合い方のコツさえわかってしまうと、すばらしい協業がたくさん生まれるような可能性を秘めているのです。

スタートアップには、シード・アーリー・ミドル・レイターというステージがあります。現状としては、シード期やアーリー期のスタートアップが非常に多いです。レイターになると、株式上場も目の前といった感じですね。

どのステージのスタートアップと組むのが良いのかと言いますと、初めてスタートアップと組む会社さんは、すでにしっかり育って、サービスもできあがっているレイターを選ぶケースが非常に多いです。

慣れてくると、企業側もどんどん目利き力が育ちますので、アーリーやシードといったステージからつかまえて、いっしょに共同開発したり、さらに資本を投じて、彼らといっしょに新しい市場を作っていく、という動きをされるケースも増えています。

自社の経験値によって、どのステージのスタートアップと組むのが良いか、というのが変わってくるという風に思います。

最近IPO(新規株式公開)をした、名刺管理のSansanや、WEB上でお店がつくれるSASE、クラウドファンディングのMakuake、会計のfreeeなども、最初の時点では「本当にニーズがあるの?」という懐疑的な声もありましたが、資金を集めて、ちゃんと結果を出して、上場して、雇用も生み出しています。

こういうスタートアップに流れていく資金は年々増えている状況で、今だと年間でだいたい4〜5千億ぐらいです。僕らが創業した2012年は650億だったわけですから、今はスタートアップを新しく立ち上げやすい環境になってきたと言えます。

一方でアメリカは、7〜8兆。規模が違いますので、まだまだ、日本のスタートアップエコシステムは育っていないという見方もできますが、ここ10年間で飛躍的に良くなってきていることは間違いありません。右肩上がりになっている背景には、以前より事業会社さんがスタートアップにお金をかけるようになってきているということもあります。

What is Open Innovation?

Ijichi:オープンイノベーションは、事業を創出する手段・方法のひとつです。イノベーションは大きく分けると、クローズドとオープンが存在していて、クローズドイノベーションというのは、完全に内製のアプローチなので、例えば自社にR&D研究部署があって、そこからイノベーションが発生するような流れです。

一方、オープンイノベーションは、自社単独ではなく、社外の企業や大学、自治体など、とくに異業種の会社と共同で新規事業の開発や創出にどんどんチャレンジしようというものです。

国が支援するオープンイノベーション

現在、スタートアップとオープンイノベーションをやることに対し、国の応援が得られる状況ですので、税制面でも非常に優遇されています。例えば去年の4月から始まっている「オープンイノベーション促進税制」を使えば、スタートアップに出資した分がしっかりと税金の方に跳ね返ってきます。

それから「研究開発税制」もあります。これも、スタートアップ企業とのオープンイノベーションやDX推進、新規事業の研究開発に際して適用可能だと経産省から言われていますので、この2つをぜひチェックして、おトクな状況をフルに活用されたら良いと思います。

我々は、イノベーションにかかる費用を一気に十分の一以下に落として、「誰でもスタートアップと新しいビジネスをつくることができる"スタートアップと社内のDXを進めることができる」という活動を通し、中小企業の方々と伴走しながら、スタートアップとの協業をお手伝いしています。

例えば広島県で、県内の中堅企業さん3〜4社とスタートアップを組み合わせたり、愛媛県のプログラムで、地元の企業さんを集めるなど、地域型のプログラムを今、いろいろなところでやらせていただいているんです。

日本の宝は、間違いなく地方にもありますし、中小企業さんもすばらしい技術を持っていたりするので、そういうところとスタートアップを掛け合わせて、新しい市場を日本発信で作っていくことに、これからの可能性を感じています。

こういうことを日本全国、47都道府県で行いながら、スタートアップエコシステムを広げ、日本中の企業のDXや新規事業創出を、微力ながらサポートしていきたいという風に思っております。

."デジタル化を推進したい"新規事業をつくりたい」ということがございましたら、過去10年分の成功体験・失敗体験をふまえた事例などもお渡しできますから、お気軽にご相談ください。

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Mimiko Ishigami
After working for an advertising agency and an advertising production office, currently working as a freelance copywriter and writer. His work ranges from creating catchphrases, naming, press releases, etc. to writing for the web media. She is especially good at interviews with people that require smooth communication.
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