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一人ひとりに寄り添ったものづくり=「HUMAN FIRST」

―都市開発事業本部の事業内容について教えてください。
私たちは、オフィスビルや商業施設、ホテル、物流施設などに注力しており、なかでも働き方の多様化に対応すべく、大中小と規模別のオフィスビル、場所に囚われないサテライト型シェアオフィスを各地に展開The company is doing so.
30〜50人規模の企業をターゲットにした中規模ハイグレードオフィス「PMO[ピーエムオー:PREMIUM MIDSIZE OFFICE]」は、開発中を含めると各地に60拠点。10名未満のスモールビジネスやスタートアップをターゲットにしたサービス付き小規模オフィス「H¹O[エイチワンオー:HUMAN FIRST OFFICE]」は、開発中を含めると各地に15拠点を展開しています。

さらに、コロナ禍でテレワークが加速すると、在宅では仕事がしにくい、隙間時間をもっと有効に使いたいといったニーズが増加。そのニーズに応えるべく、都心以外の場所でも積極的に展開しているサテライト型のシェアオフィス「H¹T[エイチワンティー:HUMAN FIRST TIME]」を拡大させており、開発中・提携を含めると70拠点、会員数は7万8000人を超えました。2020年3月時点の会員数と比較すると、倍以上に増えています。
ただ、私たちは単にオフィスビルという“箱”を作って提供したいわけではありません。目指しているのは、世の中の急激な変化と、多様化する働き方や価値観に対応し、一人ひとりが本当に“働きやすい場・時間”を提供すること。その実現のために掲げているビジョンが「HUMAN FIRST(ヒューマンファースト)」です。
働く一人ひとりに寄り添ったものづくりをすれば、個々が最大のパフォーマンスを発揮できるようになる。それはチーム力、企業競争力、企業価値につながり、一人ひとりの幸せにつながっていく。――私たちはヒューマンファーストに反するものづくりはしないことを徹底しています。
長い検証期間は不要。即採用スタイルでの協業

―野村不動産は10月にアクセラレータプログラムを開始されました。これからスタートアップとの協業が始まると思いますが、プログラム導入の背景について教えてください。
野村不動産はこれまでも、ヒューマンファーストを実現できる商品・サービスであれば、スタートアップから大企業まで、企業規模に関係なく協業してきた実績があります。たとえば、生体認証セキュリティ、会議室予約システム、受付システム、フードトラック・プラットフォーム、空気中ウイルス除去装置などの様々なスタートアップ企業と協業してきました。
しかし、不確実性の時代においては、もっといろんな知見や考え方でものづくりをする必要があります。そこで、より多くの方と接点を持たせていただきタッグを組むことで、オフィスをハード面とソフト面の両方からアップデートしたいI thought about it.
―スタートアップが野村不動産と協業するメリットや特徴は何でしょうか。
私たちは、協業できると判断したらすぐに採用するスタイルを取っています。もちろん、大規模なコストが発生するものは実証実験から始めますが、たとえば月額で始められるようなSaaSサービスは即採用して試してみます。なぜなら、プレゼン資料の作り込みや長いトライアル期間によって、スタートアップの大切な時間を奪いたくないから。
この、時間ロスが少なく、すぐに試せるのは、スタートアップにとってメリットの一つではないでしょうか。
私たちがスタートアップと協業することで実現させたいのは、大きく4つあります。1つは先ほども申し上げた「多様な働き方に合わせた商品・サービスを提供」すること。既成概念にとらわれず、新しい時代の働き方を牽引するような取り組みをしたいと考えています。
Second,「オフィスビルの運営管理の効率化」です。労働力人口減少により、各社が人手不足問題に直面していますが、オフィスビルの運営管理も例外ではありません。メンテナンスや受付、清掃など人に頼った業務はまだたくさんあるので、それらの効率化や自動化を実現させたいと考えています。
Third,「入居者様同士の交流の活性化」です。これまで野村不動産では、入居されている入居者様同士の交流を深めてコミュニティを活性化するために、積極的にオフラインのイベントを開催してきました。しかし、これからはオンラインを利用した交流を深める仕組みが不可欠です。大企業からスタートアップまで多くの入居者様をうまくつなげる仕組みを構築し、情報交換やビジネスマッチングを実現させたいと考えています。
Fourth,「必要としている人へ、最適なワークプレイスを届ける」こと。野村不動産は、ニーズや用途に応じたさまざまなワークプレイスの提供を強みにしている反面、まだまだ届け切れていないのが事実です。そこで、必要としている人にダイレクトに届けられるような、新しいプロモーション方法を一緒に模索したいと考えています。
協業、出資、共同研究。あらゆる選択肢を提供

―協業することでスタートアップが使えるリソースはたくさんありそうです。具体的に何を活用できるのかについて、改めて教えてください。
全国に大中小さまざまな規模のオフィスを展開しているので、実証実験の場はすぐに提供できます。たとえば、あるPMOに入居されている全入居者様に対して、パフォーマンスを向上させられる商品を導入し、ご利用いただいた反応を見ることも可能。さらに、入居者様に有意義と感じていただけるようなサービスであれば、直接入居者様にお繋ぎすることもできます。
つまり、エリア・サイズ問わず幅広いオフィスラインナップと、そこで働く入居者様に対して、最先端テクノロジーや商品・サービスを提供でき、コネクションも作れるのです。
また、野村不動産グループとの事業シナジーを前提とした出資も積極的に行っており、不動産営業やオペレーションのデジタル化や、スマートシティに関するテクノロジーをお持ちのスタートアップもご相談いただきたいですね。
他にも、新しいオフィスのあり方を探るプロジェクトとして「ヒューマンファースト研究所」を立ち上げています。これは、外部アドバイザーとして大学の教授や予防医学の石川善樹氏などに参画いただいており、人の生産性を最大化させ、かつ人間回帰や人間進化につながる要因を探り、新たな知見や発見を発表する組織。この研究所との共同研究も可能ですし、外部への発信機会もあるので、それを活用すれば販路拡大につながると思います。
それだけでなく、実際に協業をする際に場所が課題になる場合は、タイミングによってはH¹OもしくはH¹Tのトライアル利用も可能。働く場のコンサルティングも承りますので、お気軽にご相談いただきたいと思っています。
「働く」と「オフィス」に関わることはすべて対象

―メリットがかなり大きいですね。どういったスタートアップとの協業をイメージしていますか?
ヒューマンファーストのビジョンを掲げて一緒に協業できるなら、企業規模も事業領域も全く問いません。
「働く」にまつわる“衣食住”と「オフィス」に関することはすべて対象になるので、たとえば、バックオフィスのDXやウェルビーイングに関するサービスもいいですし、目に優しいライト、集中力を増す植物、ランチニーズに応えるサービス、最先端技術のセキュリティなど、ハード・ソフトの両方で可能性を探りたいです。
リモート環境で“雑談”が減り、エンゲージメントや心理的安全性などに課題が生まれているので、雑談をオンライン上で再現できるようなサービスもあれば面白いですね。私たちが想像できていない領域で、「働く」をアップデートするテクノロジーやアイデアはたくさんあると思うので、そういった領域にも期待したいです。
いずれにしても、入居者様のパフォーマンスを最大化できれば、野村不動産も協業するスタートアップも入居者様も、みんながハッピーになれます。スタートアップは販路拡大につながりますし、入居者様との個別のコラボレーションも生まれるかもしれません。
私たちはいわゆる2社間でのオープンイノベーションに閉じるのではなく、「共創コミュニティ」を広げていきたいと考えているので、この考えに賛同する企業とはぜひ協業したいですね。
人が人らしく働けて、働く時間を幸せな時間に変えたい

―野村不動産はいわゆる“硬い大企業”ではなく、かなりフットワークが軽い印象を受けました。
フットワークの軽さと柔軟性は私たちの強みです。特に都市開発事業本部は、役員ともすぐにコンタクトが取れるくらいフラットなので、話も早い。これは、外部からジョインした社員が最初に驚くカルチャーです。
それを象徴するかのように、オープンワークの「コロナ禍で評価を上げた会社ランキング」では1位をいただきました。コロナ前から、提供するオフィスビルだけでなく、自社の社員が働きやすい環境を追求してきたことが、その結果につながったのだと思います。
今は徐々に出社することも増えましたが、出社する・しないは、個々のライフステージや仕事内容、働き方によって異なります。個人がパフォーマンスを最大化できる働き方は、自ら選択できることが大切だと考えています。
―「働き方」を提案するからには、自分たちが第一人者として実践する。その姿勢を大切にされていることがわかりました。これから野村不動産が目指すこと、描く未来について教えてください。
働き方の最適化によって、作業の効率を上げ、クリエティブな活動ができるようにするのはもちろんですが、一番大切なのは「幸せ」かどうかです。普段の仕事や働き方を不幸せに感じていると、仕事のパフォーマンスは上がりません。
最近、日本でも幸福経営が注目されてきましたが、人が人らしく幸せに働けることは、人類にとって必要不可欠だと思うんですね。働き方改革で残業時間や就業時間を減らすといった数値目標の施策から始めるのではなく、幸福度を上げることを考えたい。
私たちは、働き方そのものをマネジメントする存在になることで、働く人の働く時間を「幸せな時間」に変えていきたいWe think that this is a good idea.
