本記事では、中国の清華大学社会サービスの機能の一つとして先進的なビジネスプロジェクトを提供する清華大学サイエンスパークと国内最大級のスタートアップコミュニティを運営するCreww株式会が合同で開催した「日中企業イノベーション交流会」の模様をダイジェスト形式でお届けする。
交流会は5時間にも及ぶ長丁場で行われ、数多くの登壇者、そして数多くの参加者が訪れた。中国からは10社のスタートアップが来日するなど、非常に熱量溢れるイベントとなった。国内からも大手投資機関が参加するなど、イベントの盛り上がりは最高潮に。日本×中国の新ビジネスが生まれる拠点として、“起業先進国日本”への変革を目指す取り組みを追った。
※この記事は、2018年5月7日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。
スタートアップから始まる“日本再興戦略”。Creww伊地知氏が描くアクセラレーションの未来
本交流会は「イノベーション」をテーマに、日中それぞれの優れた技術や製品、サービスを双方の市場へ紹介・提供することで、日中間の経済の発展を促進させることを目的として開催されています。

Crewwと共に交流会を主催する清華大学サイエンスパークは、中国で最も革新的なサイエンスパークを目指して設立された。独自の技術的・人的資源と革新的な若い起業家をつなぎ、秀逸なサービスをハイテク企業や研究開発企業に提供することで、国内外のベンチャー企業ビジネスの拠点になっている。
イベントにはスタートアップから大手企業、大学機関、インキュベーション施設など、さまざまな登壇者が一同に介した。これから始まる日本と中国の最先端ビジネスを一目見ようと、会場には多くの参加者が集結。過去イベントの中でも最高潮の盛り上がりとなった。
セッションの初めに、Creww代表の伊地知天氏が挨拶。「中国と日本の協業には、非常に大きな可能性があると思っています。しかし現在、日本のスタートアップエコシステムはまだまだ成熟していません」と語った。

Alethea triandra var. japonica (variety of kangaroo grass):日本企業の時価総額上位は、そのほとんどが大手企業。しかし海外を見渡せば、テクノロジーを駆使した急成長企業や、若い企業が瞬く間に上位にランクインします。日本は企業後進国とも言われ、また、若い企業を支援するVCや投資家も少ないのが現状です。
Crewwはそうした現状を受け、2012年に立ち上がりました。民間企業がスタートアップエコシステムを創り出し、スタートアップを取り巻く環境を少しでも良いものにしていこうという挑戦です。
これまでに、成長機会を創出することにコミットし、今ではおよそ3,400ものスタートアップがCrewwに登録をしています。スタートアップ同士でナレッジをシェアし、切磋琢磨し合う環境を整えて参りました。
大手企業とスタートアップが協業し、新たなビジネスモデルも生まれています。そして今後はリアルイベントにも力を入れていきます。今日の交流会も、海外諸国から遅れをとる現状を打破し、日本が起業先進国として世界を牽引する存在になるきっかけになればと思っています。
起業先進国・日本へーー。投資家とスタートアップが語る日本の現状とこれから

イベントの最初のセッションには、東京大学エッジキャピタル、神奈川サイエンスパーク、日本政策投資銀行(DBJ)中川雅晴氏、東京海上日動火災保険 森岡秀祐氏、セブン銀行 松橋正明氏・呉暁雪氏、清華企業家協会(TEEC)日本分会 孔令傑氏が登壇。スタートアップの成長を支える側の視点から、日本の現状と今後の展望をディスカッションを行なった。
起業家の数は徐々に増えつつあるも、日本には、なかなか企業環境が根付かない現状がある。そのボトルネックは、キャピタリストの少なさに起因しているとの声もあるほどだ。起業家と投資家、双方の数が増えていくことが、企業先進国への第一歩となるかもしれない。

また、続いてのセッションでは「企業マッチングに関する講演」と題し、Creww 李東徹氏、日本貿易振興機構(JETRO)金京浩氏、中関村駐東京連絡処 王洪燕氏、Tus Starインキュベーター 刘博氏が登壇。
日本貿易振興機構の金氏は「日本に対する憧れがあり、日本に留学し、日本で就職しました。現在は、日本貿易振興機構に務め、日本への進出や投資など、支援しています。中国と日本が協力できる分野を見出していければ」と語った。
その後中国のスタートアップ10社がピッチを行なった。コンサルティング企業「ボストンコンサルティンググループ」(BCG)が中国アリリサーチ、百度発展研究センター、滴滴政策研究院と共同で発表した『中国インターネット経済白書:中国インターネットの特色を読み解く』によれば、中国のユニコーン企業の多さと、創業からユニコーン化するまでのスピード感には目を引くものがある。
ピッチ終了後にはネットワーキングタイムが設けられており、今日この場所から新しいビジネスが生まれる熱気が感じ取れた。
本イベントのように今後ますます交流が盛んになれば、日本も世界を股にかけるユニコーン企業が誕生する可能性も考えられる。また、中国企業の日本進出も今後加速していくだろう。