加えて時代の変化が激しくなっており、時代の流れに対応した業務が求められるため、これまで通りの事務事業を行っていては、質の高い行政サービスの提供が難しくなってきました。このような環境で活用できるのが「オープンイノベーション」です。
今回は、オープンイノベーションの先進地である神奈川県の事例を活用してオープンイノベーションの概要やメリットについて紹介していきます。
目次

オープンイノベーションと地方自治体の関係

まずは、オープンイノベーションを地方自治体が主導する理由を解説していきましょう。
オープンイノベーションとは
オープンイノベーションとは、2つ以上の企業や組織・団体がお互いのリソースを活用し、1社では実現しなかったような革新的なビジネスやサービスを創出する手法です。
ビジネス界ではイノベーションを起こすための手法として注目されており、大手企業とスタートアップが連携して、新たなビジネスを創出する事例が増えています。
オープンイノベーションが社会課題の解決に有効
オープンイノベーションはビジネス界だけで用いられる手法ではありません。近年では地方自治体が社会課題を解決するためにオープンイノベーションに取り組む事例が増えてきました。
オープンイノベーションによって都市部のスタートアップと協働して住民サービスの向上を図るシステムやサービスの開発に乗り出す事例や、スタートアップと地場産業を繋ぎ、地域活性化を促進するといった事例が出てきています。
自治体主導のオープンイノベーションが増えている
先進的な自治体では、自治体内でオープンイノベーションを促進するような施設の整備を行い、イベントを開催してスタートアップと地域企業のマッチングを行っています。
また、スタートアップとのコネクションを持っていない自治体はオープンイノベーションプラットフォームと連携してスタートアップとの連携を深めるなど、自治体主導によるオープンイノベーションの事例が増えています。
地銀主導のオープンイノベーション
神奈川県では、自治体主導のオープンイノベーションだけでなく、地域経済を支える金融機関がハブとなってオープンイノベーションの仕組みを活用している。
横浜銀行アクセラレータープログラム

横浜銀行は、地域中核企業の成長および地域経済の活性化につなげることを目指し、Creww株式会社、コンコルディア・フィナンシャルグループの横浜銀行と共に、同行の創立100周年記念事業の一環としてオープンイノベーションによる新規事業の創出を目的とした『横浜銀行アクセラレータープログラム』を2021年に開催した。
本プログラムは、神奈川県または東京都に拠点を置く地域中核企業4社<エバラ食品工業株式会社、株式会社ノジマ、フィード・ワン株式会社、三菱鉛筆株式会社>の豊富な経営資源と、全国のスタートアップ企業 の持つ全く新しいアイデアや斬新なノウハウの双方を活用して、新たなビジネス・サービスの共創や既存事業のイノベーションをはかることを目的に実施された。
自治体によるオープンイノベーション推進のメリット

続いて、自治体がオープンイノベーションを推進するメリットについて紹介していきます。
地域独自の社会課題を解決できる
これまで、地域課題を解決するのは地方自治体が中心でした。しかし価値観が多様化し、社会環境の変化が激しくなったことで、これまでのように行政だけで社会課題を解決することが困難になってきました。オープンイノベーションにより様々なアイデアを持つスタートアップと協働して社会課題を解決していくことが期待できるため、多くの自治体が注目しています。
交流人口や移住者の増加につながる
オープンイノベーションにより、自治体や地元の企業とスタートアップが連携することで、都市部との交流が活発になります。共にプロジェクトを進めるなかで関係人口が増加し、自治体に拠点を設けることになれば移住者の増加も期待できます。関係人口や移住者の増加は多くの自治体に共通するテーマですが、オープンイノベーションによって人口減少対策に取り組むことも可能です。
神奈川県主導の「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」とは

神奈川県は全国の自治体の中でも先進的にオープンイノベーションに取り組んでいます。そこで、神奈川県の主導しているプロジェクトについて紹介していきましょう。
神奈川県主導のオープンイノベーションプログラム
「ビジネス・アクセラレーター・かながわ」は神奈川県が主導しているオープンイノベーションプログラムです。神奈川県内に拠点を持つ大企業や中堅企業と、質の高いベンチャー企業の事業連携の創出を目的としており、プロジェクトの内容によっては神奈川県が開発や実証実験にかかる費用を一部負担します。
このプログラムでは行政の強みを活かして企業だけでなく金融機関や大学・研究施設とも協議会を形成し、資金面・技術面でのサポート体制を整えています。
また、「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム」では、社会性を持ったスタートアップを支援し、地域課題をビジネスで解決するような起業家の育成や支援を行い、大企業や投資家との接点づくりを後押しするオープンイノベーション形式のプログラムを実施しています。
このように神奈川県では、県内の事業者の支援や、スタートアップによる社会課題の解決に積極的に取り組んでいる点が先進的といえるでしょう。
スタートアップ支援の政策や拠点の整備も
神奈川県はオープンイノベーション形式のプログラムだけでなく、スタートアップ支援の政策や拠点整備も充実している自治体です。先述した「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム」だけでなく、神奈川県のベンチャー企業を支援する「かながわベンチャー限定クラウドファンディング」や大学生、シニアの企業支援にも取り組んでいます。
このような起業家たちが活動する場所の整備も併行して行っており、「SHINみなとみらい」「HATSU鎌倉」という2つの起業家向けの拠点を整備。県内の起業家が活動し、成長するための場所や機会を提供しています。
自治体主導で地域のオープンイノベーションを推進していこう

神奈川県はオープンイノベーションを活用することで地域経済を活性化させ、社会課題の解決に取り組んでいます。多様化する社会では自治体による社会課題の解決だけでなく、ビジネスと社会課題の解決を両立するような取り組みも求められるようになりました。
自治体でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の実装が進み、積極的に民間企業の力を活用できる自治体と、そうではない自治体では行政サービスの質や行政事務の効率化に大きな差がつくことが考えられます。
今後は自治体の持続可能性を高めていくための一つの手法として、オープンイノベーションを活用することも検討していきましょう。
