CMJと連携した「OurPhoto」。協業から生まれたシナジー

Innovation
「家族の思い出を、美しい写真に残したい」。そう思う方も少なくないだろう。しかしながら、プロのカメラマンに撮影を依頼するのはまだまだ敷居が高い。高い費用を要する上に、かしこまった服装で写真館に足を運ぶのが一般的だ。写真館では似たような背景、同じようなポージングで撮影するのが通例。日常にある思い出を写真に残すことはできない。そんな不満を解決するサービスが「OurPhoto(アワーフォト)」だ。

「OurPhoto」はプロ、もしくはそれに準ずる技術を持ったカメラマンと、写真を撮ってもらいたい依頼者をつなぐプラットフォーム。相場の半額以下の価格で依頼できる上に、フォトグラファーが撮影現場に足を運んでくれる。今年の2月には「crewwコラボ」を通じてキヤノンマーケティングジャパン(以下、CMJ)との協業が決定し、サービス拡大に向け邁進中だ。今後の世界進出に向け「もっと気軽に写真が撮れる世界を創りたい」と話す平野歩代表と、「OurPhoto」と協業して市場拡大を狙うCMJの齋藤氏にお話を伺った。

※この記事は、2017年8月9日、creww magagineにて公開された記事を転載しています。

「プロに撮ってもらう」をよりカジュアルに

―― まずは、起業したきっかけについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
平野歩(以下、平野):もともと、私は大手印刷会社に勤務していました。主に写真撮影の仕事に従事していたのですが、写真を一枚撮影するコストは低くなっているのに、撮影にかかる費用は安くならない業界構造に疑問を感じていたのが起業のきっかけです。現状、一般の人がプロのフォトグラファーに撮影依頼をすることはほとんどなく、写真館に足を運ぶのが通例。「もっと気軽にクオリティの高い写真が撮れたらいいのに」と思い「OurPhoto」を創業しました。

Our Photo株式会社 代表取締役 平野歩

―― 「OurPhoto」はどのようなビジネスモデルになっているんですか?
平野:「OurPhoto」はフォトグラファーと写真を撮ってほしい依頼者をつなぐプラットフォームです。フォトグラファーはプロから、それに準ずる技術を持ったセミプロやアマチュアまで全国に400名程が登録しています。フォトグラファーによって異なりますが、最低価格は6千円。業界の相場がおよそ3万円なので、幅広い層の方々に様々なシーンで利用していただいています。

―― たとえばどのようなシーンで利用されていますか?
平野:カジュアルなシーンで一例を挙げると、家族のちょっとしたイベントごとや結婚記念に写真を撮ってほしいという依頼が多いです。また、女子会にフォトグラファーが呼ばれるといったこともあります。フォーマルな場であれば、七五三や成人式での撮影などでもご利用いただいていますね。これまでは記念日だけに需要があった「プロに写真を撮ってもらう」というサービスが、日に日に身近な存在になっているのを感じています。

「OurPhoto」が選ばれる理由

―― 競合他社も少なくないと思いますが、「OurPhoto」が選ばれる理由はどこにあるのでしょうか?
平野:第一に依頼の気軽さです。価格が安く、ウェブサイトから気軽に撮影依頼ができるため、よりカジュアルなシーンで利用することができます。たとえば、離れて暮らすおじいちゃんやおばあちゃんと食事に行く機会や、花見や紅葉など季節毎のアクティビティーでも利用可能です。写真スタジオではできなかった“日常の思い出を美しい写真に残す”ことができるのも選ばれる理由だと思っています。

また「OurPhoto」のユニークな点は、様々なバックグラウンドを持ったフォトグラファーが所属していることでしょうか。普段は会社員をされている方が「週末フォトグラファー」として活動されていたり、本業がモデルの方もいます。同じ共通点を持つ人であれば撮影前の緊張も和らぎますし、モデルの方に撮影を頼めばポージングを教わることもできるんです。

―― 依頼者がフォトグラファーを選べるのは大きな利点ですね。
平野:おっしゃる通りです。フォトグラファーは人によって得意な撮影方法が異なりますし、値段も違います。用途に応じて数多くのフォトグラファーから好みによって選べる上に、過去の撮影実績によってスコアがつけられています。シーンによって自由に選べるのは、ユーザーにとって非常に大きなメリットになっていると思います。

―― 撮影依頼者はもちろん、フォトグラファーの活躍の場も広がりそうです。
平野:起業した背景に「フォトグラファーの活躍する場を増やしたい」という思いもありました。カメラが好きで、プロ並みのスキルを持つ方は大勢います。とはいえ、フォトグラファーとして生計を立てるには、独立して専業フォトグラファーにならなければいけない場合がほとんど。つまり、「綺麗な写真を撮ってほしい」「独立とまではいかずとも、写真で収入を得たい」という2つのニーズが満たされていませんでした。依頼者だけではなく、フォトグラファー側からサービス認知を促せるのも「OurPhoto」の強みです。

―― ユーザーの拡大はもちろん、フォトグラファーの獲得も必須ですよね。何か独自のマーケティングをされているのでしょうか?
平野:これまでマーケティングに一切費用を割いていないので、オーガニック検索で獲得した流入がほとんどです。もしくは、ユーザーもフォトグラファーも、口コミでサービスを知っていただいています。また、これまで伸びは緩やかでしたが、今年に入り前年比10倍のペースでユーザーが増加しています。「crewwコラボ」(crewwの提供するスタートアップ企業と大企業が新しい市場価値を創造するオープンイノベーションプログラム)を通じて今年2月にCMJさんとの協業が決まったのが最大の要因です。

―― CMJはどのような施策で「OurPhoto」のサービス拡大を支えているのでしょうか。

斎藤:キヤノンの新製品発表会で「OurPhoto」のサービス紹介をお話ししたり、直近では「OurPhoto」を利用して撮影した写真を無料のフォトブックにしてプレゼントする「1000人体験キャンペーン」を行いました。弊社も積極的にPRの場を設けて認知拡大をしているところです。7月からはフォトグラファーの登録会を全国で開催しています。場所は弊社の会議室を利用していただいており、一緒に何ができるのかを検討しながら、お互いの資産を活用しています。

―― CMJが事業会社に出資する機会はそう多くないですよね?
斎藤:そうですね。普通、大企業は「事業を一緒に育てる」というよりは「シナジーを生めるか」が協業のポイントになります。また、意思決定のスピードが早いとは決していえないため、話を通すのは簡単ではありません。総じてベンチャー企業との協業は難しい場合がほとんどです。しかしながら、「OurPhoto」のビジネスモデルは弊社のビジネスモデルと非常に親和性が高い。弊社も新しい取り組みを推進する機運が高まっているところだったので、今回はスムーズに提携が進みました。平野:仮に他の企業とパートナーシップを組めたとしても、CMJさんより親和性が高い企業は少ないと思います。私も以前は大企業に勤めていたので分かるのですが、やはりスタートアップと大企業の協業はとても難しい。CMJさんがなかなか踏み込みづらい下流のサービスを弊社は提供しているため、相互に大きなメリットを提供し合えたのがポイントになりました。斎藤:親和性が高い分、「OurPhoto」のサービス拡大が弊社の売り上げにも直結します。なので、より近い目線で戦略を考えられるんです。ただ出資をして終わるのではなく、自社のサービスを成長させる視点で経営に参画できるのも、今後「OurPhoto」の成長を加速させる要因になると思います。

―― 今後はどのような展開を検討されているのでしょうか。
斎藤:1年以内にサービスの依頼件数を10倍に伸ばしたいです。現状の進捗からかんがえると、それ以上にビジネスが拡大する可能性があると思っています。平野:シェアリングの領域が増加しているので、シェアリング自体の需要が増えてきています。写真撮影に関しても同じことが言えます。まだまだ解決しなければならない「不」のニーズは山積みです。時代にマッチしていない部分を改善していくことで、今後さらなる需要が望めると思っています。まずは全国にフォトグラフファーを配置して、低価格帯から高価格帯まで幅広いニーズに対応できる仕組みを構築して行く予定です。シェアリングサービスの多くは海外から日本に輸入されたものですが、日本から海外に進出して、ビジネスモデルを海外に輸出していきたいとも考えています。
(了)

執筆
INNOVATIVE PORT編集部 
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