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土曜日, 12月 3, 2022

タクシー並みの料金で空の移動を実現させる!西武ホールディングスとAirXのオープンイノベーション

日本では一般的ではない小型航空機による空の移動。そこに一石を投じたのが、エアモビリティの交通プラットフォームを提供するAirXと西武ホールディングスだ。2017年10月、AirXは西武グループのアクセラレータープログラム「Biz Lab Accelerator 2017」に採択され、2社の協業によって次世代交通ビジネスの創出に取り組んでいる。「東京―下田・箱根」間のヘリ直行便を提供した実証実験では、価格の安さと新しい体験価値に大きな反響を呼んだ。具体的に、どのような取り組みをしているのか。西武ホールディングスの経営企画本部 西武ラボ部長の田中健司氏と、AirX代表取締役の手塚究氏に話を伺った。

自前主義のみならず、オープンイノベーションで他社と協業する道を選択

田中 西武ホールディングスは、鉄道業やバス業、 沿線レジャー事業などの都市交通・沿線事業、ホテル業、ゴルフ場業などのホテル・レジャー事業、不動産賃貸業や商業施設運営などの不動産事業、その他、埼玉西武ライオンズ、伊豆箱根鉄道、近江鉄道など、グループ会社78社が「でかける人を、ほほえむ人へ。」というスローガン実現に向けてさまざまな事業を展開しています。

こうした既存事業の強化はもちろん、新規事業創出にも力を入れるべく、2017年に専門部署として西武ラボを立ち上げました。

それまでも各社で新規事業は検討していたのですが、専任者がいなかったため都度プロジェクトを立ち上げる形でやっていました。また、オープンにアライアンスを組むよりはクローズドに自前でやることを得意としていました。しかし、さらなる成長に向け、いくつもの事業をスピード感をもって立ち上げていくには、不十分でした。 そこで、スタートアップに話を聞きに行ったり、同業者で先行してオープンイノベーションに取り組む企業からヒアリングした結果、各社が導入しているアクセラレータープログラムの実施を決定。スタートアップや大企業と協業する道を選びました。

「でかける人を、ほほえむ人へ。」を実現する空の移動

―どんなスタートアップと組みたいと考えていたのでしょうか。

田中 まずグループスローガンの「でかける人を、ほほえむ人へ。」に沿った事業であることが前提にありました。今は家から出なくてもスマホがあれば生活が成立する時代ですから、玄関のドアを開けてもらわないとビジネスチャンスにはつながりません。

そこで、玄関を開けてもらう「オープン×ドア」と、玄関を開けた先の移動「オープン×アクセス」の事業領域にある企業と組みたいと考えていました。

アクセラレータープログラムでご応募いただいた提案件数は60件以上ありましたが、最終プレゼンに進んだのは手塚さんのAirX社を含めて2社。移動そのものに新たな価値を生み出したいと考え、さまざまな取り組みをしてきた西武グループにとって、手塚さんが実現させようとしている「空の新たな交通網作り」は魅力的でしたし、我々の考えとも合致しました。

―手塚さんは、今回なぜアクセラレータープログラムに応募されたのでしょうか。

手塚 AirXは、次世代交通イノベーションを見据えて「空を身近に活用できる世界」を構築している会社です。実は創業時から「近い未来、空の移動が当たり前になる前に、どこかの企業と組みたい」と考えていて、その第一候補が西武ホールディングスだったんですね。

ただ、創業した2015年は、空の移動は料金が高いなど供給側の課題が多くあって。いかに低価格で安定的にリソースを確保できるかに時間をかけていました。その目処が立った2017年のタイミングで、偶然西武ホールディングスのアクセラレータープログラムを知り、その日のうちに応募しました。

日本は小型航空機を移動手段にしませんが、海外では当たり前に使われています。ドローンによって空の技術革新が起きていますし、20年という長いスパンで見たら、人が当たり前に空を飛ぶ時代は来るはずです。そこで、西武グループが持つレジャー施設間を空の移動で結んだら面白いのではないかという、ディスカッションが始まりました。

田中 ホテルやレジャー施設がある軽井沢や箱根は西武鉄道が乗り入れていません。特に、東京都内にお住いになられる方々の自動車所有率は低いので、遠くに行こうとすると手段が限られます。線路がない代わりに別の交通手段を提供できたら価値になりますし、海外の富裕層にはヘリコプターを活用して周遊したいニーズがあるはずなので、空にはチャンスがあると思いました。

タクシー並みの料金で、箱根や下田への移動が叶う「次世代交通イノベーション

―2017年から話し合いを始めて、最初の実証実験は2019年5月でした。調整に時間がかかったのでしょうか。

田中 最初の半年はビジネスプランを練り、その後はヘリポートの整備や現地確認、各種申請、周辺にお住まいになられている方々との調整などで時間がかかりましたね。

そもそも我々はヘリコプターを使ったサービスで完結しようとは考えていません。「人が乗れるドローン」や「自動運転」が掛け合わさった未来が来たときに、トップランナーとして関与したいと考えて、ビジネスプランを練って調整を続けてきました。

手塚 実証実験は、レジャーシーズンであるゴールデンウィークと夏休みを目指し、2019年5月と8月に実施。8月は「東京―下田プリンスホテル」を結ぶ直行便と「東京―ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」を結ぶ直行便を毎日飛ばすという大掛かりなものでした。

田中 手塚さんの「タクシー並みの料金で空の移動を実現したい」という思いに共感していたので、本当にタクシー並みの料金で実施したんですね。だから、当初は「2週間で数件の予約が入れば成功だろう」と考えていましたが、メディア等からの反響がとても大きくて、実際に搭乗された方は100名を超えました。

特に、ヘリコプターの料金を知っている人や業界関係者から「なぜこんなに安いのか」と多数ご意見をいただきました。空の業界にいい風を吹かせられたのではないかと思います。

手塚 そうですね。夏休みは東京から下田までの道路は大渋滞しますが、ヘリの所要時間は約55分。しかも1人あたりの価格を3万2900円という、ヘリチャーター市場価格の約3分の1に抑えました。東京から箱根までもヘリなら約35分で移動でき、1人あたり1万9800円。どちらも東京からタクシーで移動したのと変わらない料金だと思います。

交通渋滞から解放され、素晴らしい景色を眺められる「自由な移動」

―速達性とエンタメ性のある空の移動を、安価で提供するのは体験価値がとても高いと思います。逆に実証実験によって見えてきた課題はありましたか?

手塚 予約や当日のオペレーションなど、運用上の課題はしっかりと見えました。ただ、それ以上に体験価値が高かったと思います。

田中 ホテル事業に携わっている従業員も、下田の海を空から眺めることはなかったので「こんなにもいい景色なんだ!」と感動していました。飛行機より圧倒的に高度が低いため、飛行機からは見られない景色をずっと眺めながら移動できるのは大きな価値だと思います。

田中 それから、今回の実証実験で「ペインの解消とゲインの獲得」の両方を満たせると、事業として成立することがわかりました。夏休みに下田まで車で行こうとすると、伊豆半島を抜けるまでに渋滞で何時間もかかりますが、ヘリコプターなら約55分で到着します。これは移動に関するペインの解消です。且つ、素晴らしい景色を眺めながらの移動なので、ゲインの獲得にもつながりました。

また、移動時間が新幹線とあまり変わらない軽井沢で実験したところ、ゲインは獲得できても移動に関するペインの解消にはつながらず、そこまで反響が大きくなかったんです。これは、今回の実験で得られた大きな学びだと思っています。

いずれにしても東京から主要な観光地はおよそ200キロ圏内にあるため、ヘリコプターでの移動と相性がいいのは間違いありません。しかも飛行機のように滑走路を必要としないので、離発着の場所さえ確保できれば移動はもっと自由になります。将来運用する機体がドローンに変わっていく前提で、2020年春からも実証実験を繰り返し、事業化につなげたいと思っています。

手塚 ヘリコプターでの移動は高額なイメージがあって敬遠されてきましたが、今回のように現実的な価格になれば「自宅の近くで離発着してほしい」というニーズも顕在化してくると思います。いずれ、住宅開発の際にヘリポートを考慮するのが当たり前となり、タクシーのようにアプリで呼べる時代は来るはず。次世代航空機も次々と登場するでしょう。

そうした時代の先駆者として、これからも西武ホールディングスとの協業で快適な空の移動と未来をデザインしたいと思っています。

社名株式会社 西武ホールディングス
所在地東京都豊島区南池袋一丁目16番15号
設立2006年2月3日
代表者後藤 高志
事業概要グループ全体の経営戦略策定
グループ事業会社の経営管理
グループ全体の資金管理・調達
グループ全体の広報
グループコンプライアンスの推進
URLhttp://www.seibuholdings.co.jp/
社名株式会社AirX
所在地東京都新宿区西新宿1-1-6 ミヤコ新宿ビル 12SHINJUKU 403
設立2015年2月23日
代表者手塚 究
事業概要旅行手配事業、航空運送代理事業
URLhttps://creww.me/ja/startup/airx
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

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