【セブン銀行 × one visa】 外国籍人材向けビザ申請サービス“one visa” アクセラレータープログラムから資金調達成功までの裏側!

Innovation
セブン銀行が2016年から始めたアクセラレータープログラム。採択されたスタートアップは、日本で働く外国人労働者のビザ取得をサポートするone visaだ。しかし両社は取り組みを進めるも、当時は事業化には至らなかった。ただその後も関係性は続き、2019年にセブン銀行からの資金提供が実現。なぜ単発でのプログラムで終わらずに、継続した関係性を築けたのか。アクセラレータープログラムで得られたものとは。セブン銀行 専務執行役員の松橋正明氏とone visa代表取締役の岡村アルベルト氏に話を伺った。

ATM事業以外の多角化を目指し、アクセラレータープログラムに挑戦

―セブン銀行さんは2016年頃からアクセラレータープログラムを導入されています。その背景を教えてください。

松橋 もともとセブン銀行は、「24時間365日止まらない」ATM事業をメインに多角化を進めてきましたが、次の大きな柱となる事業がなかなか生まれないという課題がありました。

当時は、大企業とスタートアップが共創する「オープンイノベーション」が広まりつつあった頃。これにヒントがあるかも知れないと思い、Crewwを訪問してアクセラレータープログラムについて聞いたところ、「これは面白い、セブン銀行でもやりたい」と思うように。 その後すぐ弊社の社長(当時・取締役副社長執行役員)に提案して予算を確保し、有志を集めてセブン銀行の挑戦をスタートさせました。

―セブン銀行さんのアクセラレータープログラムが始まったのを見て、one visaさんはエントリーされたんですよね。

岡村 Facebookのタイムラインで誰かがシェアしたのを偶然見たのがきっかけでした。one visaは日本で働く外国人労働者のビザ取得をサポートするサービスを提供していて、早いタイミングで外国籍の方の与信を構築したいと考えていました。

そんなときに、在住外国人含め約18万人以上の方がセブン銀行さんの口座を作って海外送金されていることを知り、「これはご一緒できたら与信の構築を大きく前進させられるのではないか」と思ったんです。応募後は、セブン銀行さんがいろんな情報を提供してくれたので、プレゼンの準備に役立ちました。

松橋 スタートアップの皆さんが全力で取り組んでいるのに、我々が「提案してください」という態度でいたら絶対にうまくいかないと思い、出せる情報はどんどん共有しました。

―スタートアップからすると、応募からプレゼンを経て採択されるまでには時間がかかります。しかも、採択されなかった場合はその時間が無駄になってしまいますが、その点について不安はありませんでしたか?

岡村 不安はまったくありませんでした。応募した当時は、事業を立ち上げて間もないタイミングだったので、プレゼン資料が自分たちの事業の言語化に役立ちました。だから、仮に採択されなかったとしても言語化された資料は残るので、不安は感じませんでしたよ。

プレゼン後に即採択。設立間もないone visaの志と熱量に感動

―アクセラレータープログラムを実施したことで得られたことは何でしょうか?

松橋 貴重なパートナーシップです。これまでも外部との共創はやっていましたが、スタートアップとお付き合いは今回が初めてだったんですね。相手の時間を奪わない対応や、どんなスピード感が必要なのかなど、付き合い方のセオリーも学びました。

特に岡村さんは、課題に対して他の人がやっていないアプローチを思考されます。スピード感のある事業クリエーションができたことは、非常に価値があったと思っています。

―アクセラレータープログラムは本業とは別で動いていると思います。しかも、マネタイズできる事業を生み出すとは限らない中、社内で不安の声はなかったですか?

松橋 one visaさんに対しては、プレゼンを聞いたほぼ全員が「協業したい」と満場一致だったので、不安の声はありませんでした。とにかく志が素晴らしいんです。

岡村 僕はペルー出身で幼い頃に家族で日本に移住しました。しかし、日本のペルー人コミュニティの友人がビザの手続きができずに強制送還されてしまったんですね。この強烈な原体験から、国籍による差をどうにか平らにしたいという強い思いがありました。

国籍の差は日本に限ったことではなく、世界中で暮らす外国籍の人に当てはまること。あらゆる人が国を超えて生活できる世界を実現すべく、大学を卒業後は入国管理局の現場責任者を務めました。

ここで、どうすればビザを取得できるのか、ビザにはどのような課題があるのかを習得し、課題を解決するためにone visaを立ち上げました。

松橋 この話をプレゼンで聞いて、すぐに採択しました。入国管理局の現場責任者を務めた後に起業されるという志と熱量に感動して。だからお待たせせず、すぐにお答えしました。

岡村 早かったですよね。プレゼン後にすぐ採択されたので驚きました。

―岡村さんは、アクセラレータープログラムを通じて何を得られましたか?

岡村 「外国籍の人の与信を構築したい」と、僕がふわっと考えていたところから、プレゼンを通じて、どういう人がどんなことに苦労して口座を作れないのか、なぜローンを組めないのかなどを言語化できたのが良かったです。 しかも、プレゼン時のone visaは僕1人でやっていたにも関わらず、セブン銀行さんに採択されたことで周りからの反響は大きく、one visaの信用にもつながりました。

事業化はできなくても関係性は継続。結果、3年後の資本提供が実現

―当時のアクセラレータープログラムでは、直接事業化とはなりませんでしたが、2019年に資本提供されました。どういった経緯があったのでしょうか。

岡村 最初に採択されたとき、one visaのサービス対象は外国籍の就労者でした。一方、セブン銀行さんに口座を持つ外国籍の方の層は幅広かったため、one visaが対応しているビザではカバーできなかったんです。

松橋 相互送客をしながら与信構築のサービスを一緒に作っていたけれど、そういった理由から一旦はお互いの事業に専念していました。それからしばらくして、Creww主催のイベントでばったり会ってあれこれ議論してると、お互いのアプローチの接点が再発見できたんです。

岡村 2019年4月に施行された改正入管法により、新しく14業種が加わった「特定技能」という在留資格が制定されました。そこで、特定技能に対してもビザが取得できる仕組みや、来日・定住支援のサポートを提供することに。ここで、ようやくセブン銀行さんがサービス対象としている層とかぶることになり、話が進みましたね。

松橋 そうですね。one visaさんとは親和性も高いし志も共感できるから、資本提携の提案をしました。加えて、来日とほぼ同時の銀行口座開設ができるよう岡村さんと協業しながら進めているところです。

―「事業化できなかったら終わり」ではなく、関係性を継続できた理由や秘訣を教えてください。

岡村 人と人との距離が離れなかったことだと思います。何かあればすぐに相談できる関係性は、出会ってから今までずっと続いているんですね。その大きな要因は、メッセンジャーを使ってくれたこと。メールだとどうしても距離が出ますが、気軽にやり取りできるメッセンジャーをツールとして選んでくれたのは、本当に感謝しています。

松橋 本当に気軽にやり取りしていますからね(笑)。

メッセンジャーの気軽なやり取りが継続した関係性のカギに

―大手企業の場合、セキュリティが厳しくて外部とのやり取りにメールや電話以外を使えないケースもあります。セブン銀行さんは金融業にも関わらず、柔軟に対応できたんですね。

松橋 重要な書類は会社のメールから送りますが、普段のやり取りはメッセンジャーを使うなど、使い分けをしています。やはり、毎回「お世話になっております」から始まるメールだと、お互いに時間がもったいないですから。

岡村 投資契約書の話をするときも、メッセンジャーでやり取りをして書類だけメールで届くから、すごくやりやすかったです。今回のようにアクセラレータープログラムで事業化できなかった場合、仮にメールで「引き続き情報交換を続けましょう」と言われていたら関係性は終わっていたと思います。

気軽にメッセージを送りあえるメッセンジャーだったから、ある意味対等な立場で継続した関係を築けた。松橋さんの言うように、メールの定型文があるのとないのとでは、会話のしやすさに雲泥の差がありますからね。

松橋 我々は、お互いに歩み寄れるようなアプローチで関係性を築き、お互いの接点から新しく何を作れるかを大事にしています。

でもそれは、今回のアクセラレータープログラムを通じて学べたことなんですね。スタートアップからの提案に対して「イエス・ノー」で答えていたのでは、絶対にうまくいきません。

付き合い方にしても相手の時間を奪わないことを重視し、岡村さんに来てもらう前になるべくこちらから行くようにしましたし、手続きもややこしいものにはしませんでした。 それから、新しいことに挑戦するのだからセブン銀行の規定に合わせるのではなく、提案に合わせてどうすればできるのかを考え、必要に応じてセブン銀行のルールも変えるつもりでいます。

―セブン銀行さんのルールを変えても取り組むとは、驚きです。

松橋 セブン銀行を始めた当初、ATMは銀行の支店に置く基準しかなかったので、コンビニに置かせてもらうために各所と調整し、さまざまなガイドラインを作り変えていただきました。その後も、お客さまの利便性や、セキュリティーを高めるなどのためなど、社会課題に応じて仕組みや制度を作り変えてきた歴史があるんです。 今回の取り組みは、お客さまの利便性のために社内ルールやフローを見直す良い機会になったと思います。もちろん、簡単なことではありませんが、課題解決のためには必要だと思い、社内の協力を得ながら挑んでいきます。

社会課題を解決するために、共創できることはし続けたい

―最後に、今後の展開について教えてください。

岡村 特定技能で外国籍の人たちの就労が緩和されるので、当初からの思いである「与信の構築」ができてローンが組めるようになるなど、国籍の差をなくしたいと思っています。

松橋 我々も、協力できる部分は引き続き協力したいですね。最近ようやく、日本でも外国人労働者への関心が向いてきたので追い風だと思っています。

以前、セブン銀行で海外送金や海外で発行されたカードを使えるようにした頃、日本は鎖国状態でした。当時からセブン‐イレブンで働いている方やお弁当を作っている方に外国籍の方はたくさんいたのに、銀行で口座を作れない・お金を海外に送れないなどの問題が山積みで。

日本人だけに閉じた社会ではなく、もっとカルチャーミックスされた多様化した社会にすべきで、そうなったときにone visaのサービスは必要不可欠になると思っています。

岡村 特定技能の制度ができるまでは、日本で働く外国籍のほとんどがエンジニアやデザイナーなどの高度人材でした。それは、世界的にも稀なことなんですね。結果、エンジニアやデザイナー視点でしか、日本での生活が語られてこなかった。

だけど、特定技能によっていろんな職種の人が就労するようになれば、日本で働くことや生活することについての情報がより多く発信されるようになるはずです。それが、日本で働きたい外国籍の就労者を増やすことにつながり、受け入れ人数の増加にもつながると思います。 そのとき、セブン銀行さんと一緒に外国籍の方にとって課題になることを解決していけたら嬉しいです。

執筆
田村 朋美 
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。

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