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木曜日, 5月 26, 2022

東芝が取り組む、“本気”のオープンイノベーションとは|2022年度の挑戦!

1875年に創業し、エネルギーや社会インフラ、ICTなど、人と地球の明日を支える「社会の基盤となる事業」に取り組む東芝。そんな東芝が “本気” のオープンイノベーションで新規事業創出に取り組んでいる。すでに法人化したプロジェクトもあるというが、具体的に何をしているのか。グループ全社で新規事業創出の旗振り役をしているCPSxデザイン部 CPS戦略室の相澤宏行氏と岩本晴彦氏に話を伺った。

外部人材と内部人材のハイブリッドなイノベーション組織を新設

オープンイノベーションを推進している背景

――東芝では2019年からオープンイノベーションに取り組んでいますが、そのきっかけを教えてください。

相澤 東芝はこれまで約140年にわたって、モノを作って売るビジネスを展開してきました。しかし、今求められているのは、モノを作って売った後、お客様がきちんと活用して成果を出せるよう伴走しながら、そのデータを蓄積・分析して、新たな価値をお客様にお返ししていくこと。

ただ、それを自分たちだけで実現するのは限界があります。ビジネスモデルや思考を変えるには、今までのように内に閉じるのではなく、自分たちが持つ技術や知見を世の中に開いて、いろんな人に使ってもらいながら共創するエコシステムを作る必要がある。

そこで、ハードウェアやソフトウェア、ロボティクス、IoT、インダストリー4.0等に造詣が深い、元シーメンスの島田太郎氏を迎え、CPS推進部門が立ち上がりました。

私と岩本が所属するCPS戦略室は外部からジョインしたメンバーと、東芝の技術等をよく知るメンバーで構成したチーム。2019年9月から本格的にオープンイノベーションの取り組みを始め、グループ全体の新規事業創出のサポートをしています。

――お二人とも部門が新設されてからジョインしたのでしょうか?

岩本 そうです。私は外資系ITベンダーやコンサルティングファームなどを経て、2019年7月にジョインし、「新規事業提案制度」を立ち上げ、9月から本格的にオープンイノベーションの立ち上げを開始しました。

相澤 私は岩本の2ヶ月後にジョインしています。それまで、電機メーカーやコンサルティングファーム、ベンチャー投資など、比較的大規模な会社に軸足を置いて、いろんな会社との共創で新規事業を立ち上げていました。

4/28締切!東芝オープンイノベーションプログラム2022
東芝のさまざまな事業分野における豊富な製品群や技術と、パートナーの皆様のデジタル技術・ビジネスアイデアを掛け合わせ、新たな価値の創出を⽬指します。協業パートナーを積極的に求めている東芝グループ各社が集結し、新たな事業の創出を目指す共創プログラムです。
➤テーマ:サイバーとフィジカルの融合で実世界に新たな価値を。
➤募集ページ: https://growth.creww.me/dadee07c-a0ca-11ec-bfed-ed6acc2b5168.html
Toshiba SQBM+ Challenge
東芝は長年に渡る研究から生み出した量子アルゴリズムを活用して社会課題の解決に取組んでいます。既存のコンピュータで今すぐ使える高速・大規模の「量子インスパイアード最適化ソリューション SQBM+(エスキュービーエムプラス)」。この革新的な技術をフル活用して共に社会課題を解決する「志」を持つパートナーを求めています。
➤テーマ:「今すぐ使える」量子インスパイアード技術で社会課題を解決
➤募集ページ: https://growth.creww.me/8053f50e-9e79-11ec-9676-85fc79ed1a51.html

新規事業に大切なのは、当事者意識

社内人材と外分人材のハイブリッド部門

――社内にいる人だけでなく、外部の人材も集めて作った部門であることに、本気度が伺えます。

岩本 CPS戦略室は私や相澤のように、事業戦略やコンサルティング、新規事業立ち上げを長年経験した外部人材がジョインしていますし、そもそもトップである島田も社外から加わっています。

――新規事業の創出をどのようにサポートするのでしょうか?

岩本 我々が大切にしているのは、新規事業を特定の人だけ、特定の部門だけで取り組むのではなく、従業員全員が “みんな” で取り組むことです。従業員全員が取り組むことによって、新規事業創出の考え方が社内に浸透し、本格展開になった暁には、新たな事業を生み出す動きが加速度的に進み、事業への貢献が大きくなると考えているからです。

相澤 新規事業を専門部署で推進した場合、芽が出て事業部にパスしようとしても、既存事業があるからと受け取ってもらえなかったり、粗雑な扱いをされたりするケースも往々にしてあると思います。

新規事業に大切なのは「当事者意識」。だから、各事業会社から自発的に上がってくる声に対して、我々がサポートしています。実際、2021年12月に公募を実施したCrewwのアクセラレータープログラムも、スタートアップと一緒に新しい可能性を切り拓きたいと手を挙げた事業会社に、取り組みを進めてもらっています。

スタートアップのスピード感で取り組む新規事業

――社内の新規事業提案制度では、これまでどれくらいの応募があったのでしょうか? 

岩本 2019年から今まで、4回のビジネスプランコンテストを開催し、200を超える応募がありました。事業化を推進するために社外のパートナーとアイデアをブラッシュアップしてピッチ大会に臨むのですが、現在50件を超えるアイデアが事業化に向けて動いており、法人化しているものもあります。

――2年間で200件の応募と、50件の事業化準備、さらに法人化したものがあるとはすごいですね。

相澤 なるべく早い段階で形にするようにしています。この取り組みから生まれた一つに、一般社団法人ifLinkオープンコミュニティがあるのですが、これもグループ全社のオープンイノベーションを推進する役割を果たしています。

ifLinkとは、さまざまな機器やセンサー、Webサービスなどを簡単につなげられるソフトウェア。もともとは東芝だけで事業を検討していたのですが、オープンにいろんな人に使ってもらい、IoTを世の中に広めた方が社会貢献につながると考え、一般社団法人を設立しました。

現在、ifLinkオープンコミュニティには大企業やスタートアップ、大学などさまざまな会員が活用してくれており、ユーザーファーストのIoTサービスを共創で生み出しています。

これはまさに、東芝発のオープンイノベーション。東芝が作ったソフトウェアをいろんなプレイヤーが活用して、世の中に新たな価値を提供していく様子を目の当たりにした社員からは、CPS戦略室に相談すれば何か新しい事業を興せるのではないか」と思ってもらえるようになりました。

――スタートアップのようなスピード感で、新しい取り組みをされているのですね。

岩本 そうですね。今までの東芝からすると考えられないスピード感だと思います。とはいえ、新しい挑戦に対しての懸念や抵抗感はあるので、それを我々がほぐしながら仲間を増やしている状況です。

共創の真価が発揮されたソリューションも誕生

――これまでのオープンイノベーションプログラムの実績を教えてください。

相澤 今までオープンイノベーションプログラムは2回実施しており、1回目は18社、2回目は8社とのプロジェクトを実施しました。

1回目は初めての挑戦だったこともあり、構想で止まってしまったプロジェクトが多かったのですが、半年で商用化したプロジェクトもありました。2回目は1回目の反省を生かし、スピーディーに実証実験をした結果、7~8割くらいのプロジェクトが現在進行中です。

中には、世の中を変えるようなソリューションのアイデアも生まれていて、東芝に閉じていたら絶対に実現しなかったことができたと感動しています。

――共創したからこそ、新しいソリューションが誕生した。

相澤 そうです。例えば、創薬分野で量子コンピューター由来の技術を使った新しいソリューション。これは、東芝の量子コンピューター研究に由来する特殊な技術と、それを扱えるスタートアップ、そして創薬研究をしているスタートアップの3社が出会えなければ実現しないものでした。

2回のプログラムを通じて実感しているのは、日本には優れた技術やビジネス構築能力を持つスタートアップがたくさんいること。そんなスタートアップが東芝と一緒にやりたいと言ってくださるのは、本当に嬉しいことです。

だから、プログラムのテーマにはマッチしなくても、協業可能性のあるスタートアップはグループ内の事業会社にどんどん紹介していますし、1回目に採択して非常に良い取り組みができたスタートアップは2回目も採択しています。

――単発のイベントでは終わらせない、ということですね。

相澤 優れたアイデアや技術を持つスタートアップとつながり続けることで事業に貢献したいですし、それが東芝を変えていくことにもなると思います。

そのためには広く社内にスタートアップの真剣度や優秀さ、スピード感を知ってもらう必要があるので、プログラム最後の「デモデイ」は社内の新規事業提案制度のピッチ大会と同日に開催しています。

参加した経営幹部からは、「スタートアップのスピード感と技術力、モチベーションが素晴らしい。年1回の開催とはいわず、どんどん進めてほしい」と言われ、各事業会社からも「自分たちも何かできるのではないか、変われるのではないか」という声が上がるようになりました。

岩本 社内でも挑戦できるし、外部との共創で花開くこともある。スタートアップの真剣度と、短期間でも新しい価値を創出できることを知ってもらい、意識改革を促しています。結果、徐々にですが東芝グループ全体でオープンイノベーションの機運が高まっています。

「東芝と組むといいことがある」と言われる存在へ

――これから、スタートアップとどのような共創をしたいですか?

相澤 東芝はエネルギーと社会インフラ、電子デバイス、ICTソリューションを主要事業として、そこに紐づく各事業会社が社会に根ざしたビジネスを展開しています。でも、我々のスピード感では間に合わない社会課題がたくさんあります。

だからこそ、いろんなスタートアップとパートナーシップを組み、スピード感を持って新しい市場の開拓やソリューションの創出を実現し、お互いの事業拡大・事業貢献につなげたい。

取り組みを積み重ね、エコシステムを広げていくことで、スタートアップの皆さんには「東芝と組むといいことがある」と思ってもらえる存在になりたいですね。

岩本 オープンイノベーションは、社内の文化を変える「起爆剤」であることも間違いありません。東芝に眠っているモノ、活用しきれていない技術、自分たちでは想像できなかった可能性は山ほどあると思うので、違う視点やアイデア、技術を持つスタートアップの皆さんと一緒に、事業化につなげたいと思っています。

我々はいろんなスタートアップともっと出会いたいと思っているので、オープンイノベーションプログラムは年1回と言わず、3回4回と開催する予定です。

社名株式会社 東芝 Toshiba Corporation
所在地東京都港区芝浦一丁目1番1号
代表者代表執行役社長 CEO 綱川 智
売上高3兆544億円(2020年度)
資本金2,005億5,800万円
設立1875年(明治8年)7月
社員数11.7万人(2020年度、連結)
URLhttps://www.global.toshiba/jp/top.html
インタビュイー
相澤 宏行 氏 株式会社東芝 CPSxデザイン部 CPS戦略室 エキスパート
大手SIer、電機メーカー、精密機械メーカーで新規事業の立ち上げ、 コンサルティング、経営企画スタッフ、CVC運営などに従事。東芝ではグループ全体に向けたオープンイノベーション推進に従事。
インタビュイー
岩本 晴彦 氏 株式会社東芝 CPSxデザイン部 CPS戦略室 エキスパート CPSビジネス推進チーム リーダー
外資系ITベンダー、大手精密機器メーカー、コンサルティングファームを経て、2019年に株式会社東芝に参画。キャリアを通じて、プロジェクトマネジメント(IT・非IT)、事業戦略、新規事業企画、コンサルティングなどに従事。現職では、東芝グループの全社DX・CPS推進を実務面でリード。
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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