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日曜日, 6月 11, 2023

OPA × somete の挑戦|「まちクロッ」でファッションロス問題の解決を目指す!

金沢フォーラス、キャナルシティオーパ、横浜ビブレなど、OPA・VIVRE・FORUSの3ブランドを主軸に、都市型商業施設の開発運営を行う株式会社OPA。そんな同社は2021年、「OPAアクセラレータプログラム2021」を実施し、地域と連携したファッションロス削減に取り組むsometeとの協業をスタートさせた。OPAとsometeは具体的にどのような実証実験を重ねているのか。株式会社OPA 事業創造部 新業態開発チームの安達有美氏と、someteを運営する株式会社Play Blue代表の青野祐治氏に話を伺った。

ワクワクする瞬間やドキドキする気持ちを届け続けたい

――まずはOPAのミッションやビジョンについて教えてください。

安達 OPAはイオングループの都市型シフトの一端を担う、都市型商業施設を運営しているファッションビルディベロッパーです。ファッション視点から、衣食住すべてにおいてトレンドを感じられる新しいライフスタイルを提案しています。

『世界中の人々にワクワクとドキドキを』をビジョンに、OPAのあるエリアから人々の日常に寄り添い、ワクワクする瞬間やドキドキする気持ちをたくさん届けること、人生が豊かになるような新しい発見と驚きを提供することが、私たちの存在価値です。

――OPAの強みと、アクセラレータープログラムの実施に至った課題を教えてください。

安達 強みは大きく2つあり、1つは地域に根ざした都市型商業施設の運営ノウハウを持つこと。そして2つ目は、トレンドに敏感なステークホルダー、つまりお客さまや従業員、取引先、ショップ、各公式SNSとフォロワーなどをつなぐ接点を持っていることです。

一方で課題だったのは、お客さまニーズの多様化に伴い、行動変容が激しく移り変わるなかで、お客さまにいかにワクワクとドキドキを発信し続けるか、提供し続けるかでした。多様なお客さまの期待に応えるためには、従来の形式にとらわれない事業領域に挑戦すべきと考え、2021年からアクセラレータープログラムを開始しました。

地域と連携し、ファッションロス問題に取り組む

――2021年に初めてのアクセラレータープログラムを実施したとき、どんなことに期待しましたか?

安達 新たな顧客価値創造のためには、自社に足りないリソースや発想、新しい視点を持った企業とのオープンイノベーションは欠かせません。

そこで初回は、「自社のリソースを活用した新しいビジネス」「時代に対応した新しいライフスタイルの提案」「リアル店舗の価値を最大化し、お客さまに新しい価値体験の提供」という、広いテーマでアイデアを募りました。

――結果、60社近くから応募が集まり、そこからsometeを含めた2社を採択されました。

安達 長年ファッションビジネスに携わっている私たちだからこそ「服を売る責任」としてファッションロス削減に取り組み、「よりポジティブにお客さまがファッションを楽しめる環境」を提供したいという考えは、部署設立当初からの想いです。ファッションロスやフードロスのテーマは仕事でもプライベートでも一番身近に感じていた課題で、これを解決できたら素敵な未来につながるのではないかと思っていました。

someteさんはファッションロス問題を起点に、地域と連携して社会課題解決を目指す取り組みをされていました。私たちが目指す世界観への共通点を感じ、someteさんと共創することで「ファッション循環モデルの構築」に向けてより具体的な取り組みに発展できるのではないかと考えました。

――someteの取り組みについて、具体的に教えてください。

青野 someteは、Crewwのインキュベーションプログラムに参加したことで事業化につながり、2022年3月から株式会社Play Blueが運営する事業として展開しています。

someteが取り組んでいるのは、クローゼットに眠る服を捨てるのではなく、染め直すことで服にも地球にも優しい、サステナブルな未来づくりに貢献すること

年間約48万トンもの服が捨てられているファッションロス問題の解決と地域産業の活性化を目指し、現在は全国40以上の染め工房と連携し、染め直しサービスを展開しています。今後は連携工房をさらに拡大して、地域経済圏で服やお金が循環するような社会を目指すと共に、フードロスやフラワーロスなど、あらゆるロス問題を地域と一緒に解決したいと考えています。

――OPAのアクセラレータープログラムにエントリーした理由を教えてください。

青野 きっかけは、OPAさんからお声がけいただいたことでした。someteの課題は、染め直した洋服のビフォー・アフターをWebサイトだけでは伝えきれないことで、実店舗で実際にお客さまに見ていただく機会が必要だと感じていたんですね。

そんなとき、OPAさんから「ファッションロスと地域連携に取り組みたい」というお話をいただき、迷わず応募しました。

OPA×someteで、「まちのクローゼット(まちクロッ)」を実施

――スタートアップとの初めての協業で、難しかった点や壁になったことはありましたか?

安達 3月にsometeさんを採択後、4月から具体的なミーティングを重ねて、6月に最初の実証実験として、アップサイクルを啓蒙するイベント「〜地球に優しいブランドに触れる三日間〜THE UPCYCLE MARKET」を群馬県の高崎オーパで開催しました。

その後、第2弾として7月23日〜9月25日にかけて「まちのクローゼット(まちクロッ)」を開催するなど、スピード感を持って実証実験に取り組めています。

「まちクロッ」とは、“服の循環”を生み出す「アップサイクルコミュニティ」で、「Pass(服の回収)」、「Color(服の染め直し)」、「Trade(服の交換)」などを中心に地域と連携し、ファッションロス削減を目指す活動です。

従来なら計画から実施までいろんな社内承認を得るプロセスがありますが、今回はその壁を突破して、短期間でsometeさんとの新しい取り組みを実現できました。

――壁を突破するポイントは何だったと思いますか?

青野 それは安達さんの行動力です。裏でかなり調整をしていただいたと思いますし、とても助けていただきました。

安達 「私はこの取り組みを青野さんとスタートさせたいです」と強い思いを伝え、「やります」と言い切っていたのがポイントだったかもしれません。会社として実証実験に取り組むのは初めてでしたが、経営層に若いメンバーが多く、新しい取り組みに対する理解もあったので、都度相談しながら比較的自由にさせてくれたのはありがたかったです。

「ファッション循環モデル」を構築し、全国へ

――今後も2社の協業を重ねることで、どのような社会を実現させたいですか?

安達 前提にあるのは、ファッションロスを解決することで、よりポジティブにファッションを楽しめる環境をお客さまに提供すること。その実現に向けて、まずは高崎オーパで地域と連携しながら「まちクロッ」を育てて認知を広めたいと考えています。

実際、2社で始まった協業は、共感してくださったスタートアップや地域の方などさまざまな方が参画するオープンイノベーションになっており(参画いただいているスタートアップ=写真右:Rationaloop合同会社 田村龍之介氏)、今後もステークホルダーを増やしながら他のエリアにも順次拡大していきたいと考えています。

そのために必要なのは、OPAの店舗があるエリアから、「不要衣服の回収 → 仕分 → アップサイクル・リユース・再資源化 → 商品化(素材化)→ 再流通」という“ファッション循環モデル”を構築することです。

リアルの店舗で「かっこいいな」と思い、ワクワクしながら手に取った商品に、実は地球にやさしいストーリーがあったというような、ファッションを楽しみながらファッションロスの課題を知ってもらい、社会課題解決に少しずつ貢献できる世界を作りたいと考えています。

青野 我々も思いは同じで、まずは高崎オーパでファッション循環モデルを構築した上で、OPAさんが展開している地域で取り組みを広げ、いずれは全国で活動できればいいなと思っています。

まだ日本では「アップサイクル」という言葉自体の認知も薄いので、いろんな地域のアップサイクルブランドを集めたイベントを開催するなど、さまざまな取り組みからファッションロス問題がなくなる未来を作れたら嬉しいです。

社名株式会社OPA
設立2021年3月1日
所在地千葉県千葉市美浜区中瀬2-6-1 WBGマリブイースト22F
代表者渡邉 祐子
事業概要都市型のSC開発運営等
URLhttps://www.opa.gr.jp/
社名株式会社Play Blue
設立2022年3月18日
所在地東京都千代田区平河町2-5-3 Nagatacho GRiD
代表者青野 祐治
事業概要アップサイクルなどによる社会課題解決に向けた事業
URLhttps://somete.jp/
インタビュイー
安達 有美 氏 株式会社OPA 事業創造部 新業態開発チーム ディレクター
神戸大学経営学部卒、イオン株式会社へ入社。以降、ファッションビル事業に従事する。2016年グループ内の事業統合により株式会社OPAに所属。店舗の活性化、新店企画に携わり、新店開設室長、館長を経て2021年現職に着任。オープンイノベーションによる新規事業開発、「ファッション循環モデル」の構築を目指し、アクセラレータープログラムを開催、現在に至る。
インタビュイー
青野 祐治 氏 株式会社Play Blue 代表取締役CEO
ファッション系や大手の広告会社を経てPRプランナー/編集者に。 スタートアップでオウンドメディアの編集等を行う傍ら、循環型地域経済に興味を持ち、2018年に複業で地元のローカルストーリーメディアを創刊。地場野菜の魅力を”一杯のカレーで味わえる”「カップカレー」のプロデュースや地元の未来を考えるトークイベントを主催。 ローカルメディアの活動から得た経験をきっかけに複業として『染め文化の継承』と『衣類ロスゼロ』を目指す「somete」プロジェクトオーナー。
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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