※1…期間限定で開催している起業・事業化支援を目的としたインキュベーションプログラムです。約半年の期間でメンバー募集、プロダクト開発、市場検証を行い、新規事業の事業化を目指します。
家に眠る服が多彩に染め工房の手で蘇る
地球にも優しいsometeのCtoKプラットフォームサービス
ーまずは、someteのサービスについて教えて下さい
青野:ご自宅のクローゼットに眠るお気に入りの洋服を、全国の染め工房さんに依頼して染め直す“CtoK”プラットフォームづくりを進めています。

現在はテスト的に、藍色や漆黒、珈琲色、鈍(にび)色、タイダイ色の限定5色から希望の色の染め直しをご依頼いただけますが、今後、カラーバリーエーションも増やし、工房さんのご紹介もスタートする予定です。



ーどの様な思いでsometeを立ち上げたのですか?
青野:もともと複業で私の地元で活躍する地域プレイヤーにインタビューをするローカルメディアの創刊と運営をしておりました。その時に出会った方のひとりが藍染め工房の方で、藍染めの文化は存続の危機に面しているというお話を伺ったんです。
ある時、自分がたくさん着用した白シャツの襟元が黄ばんでしまっているのを見て、外に着ていくには少しみっともないけれど、誕生日にもらって大事にしていたので捨てるには忍びないと思っていたんですね。
そこで、以前話を聞いていた、藍染め職人の方に白シャツを染めてもらおうと思いました。そうして2週間後に返ってきたシャツは、非常に仕上がり良く、リフレッシュされていました。「いいじゃん!」と。それがこの事業に繋がる原体験です。

また、始めは、藍染めに絞ったプロダクトやサービス開発を考えていたのですが、調べる内に、全国には藍染めに限らず、黒紋付き染めなどの伝統工芸や廃棄される豆かすを使用した珈琲染め、市場にには流通できない規格外苺による「いちご染め」など、…様々な方法で染めを行う工房があることが分かりました。

そこで、他のサービスと差別化する意味でもプラットフォーム化することにしました。「新規性の高いサービスであり、かつアパレルロスやフードロス問題解決の一助になるのでは」と思い、ちょうどCrewwさんのインキュベーションプログラムの募集がはじまったので、応募しました。
ーCrewwのプログラム募集の時期がタイミングよく重なったのですね。
青野:そうですね。自分で考えている事業の構想案の良し悪しをCrewwさんに見てほしかった、サービスへの反応を知りたかったから応募しました。
STARTUP STUDIO by Crewwでの取り組み
ー実際には、どんなことからプログラムに取り組み始めたのでしょうか?
青野:まずはユーザーインタビューですね。それから染め工房の開拓。それとビジネスモデルの考案です。チーム組成はあえて後に回しました。頭の中にあるイメージを十分に検証して、自分でアウトプットしてしまってからの方が、メンバー集めの際にsometeの世界観を共有しやすいと考えたからです。
ビジネスモデルがある程度固まってきたタイミングで、デザイナーさんを入れてsometeのサイトを作ったり、アイキャッチ画像も変更しました。元々はフリー素材などを使った画像でsometeを表現していたのですが、someteの世界観をしっかりデザインで表現していくことで、共感してくださる方が集まり、そこから自分の中でも事業が動いた感じがしました。

ープログラムに参加して大変だったことはありますか?
青野:ユーザー50人にインタビューをしたことですかね。インタビューする対象者を探すことを含め、物理的な時間の確保は大変でした。「そもそもどんなサービスなのか」を説明することにコミュニケーションコストがかかったかもしれません。
また、実際に工房まで足を運び、染めを体験させていただいたりもしたので、本業を続けながら、時間の確保はとにかく大変でした。
ーユーザーと会話していく中で、何か新しい発見や気づきみたいなものはありましたか?
青野:インタビューをはじめる前は、「自分が良いと思ったものは良い」と言ったような、半ばプロダクトアウト的な発想もありましたが、インタビューをしていくうちに新しい発見があったり、自分の仮説が「やっぱりあっていたんだ」と確信を持てたりと、今思い返すとすごい必要だと思いました。
ユーザーからの「金額が高い」という声には、「なるほどな」と。インタビューは大事に反映させていただいています。「クローゼットに洋服が眠っている」という方の多さもデータ通りだと実感できました。今後は、「服を捨てるよりは、このいい取り組みを応援したい」と言って下さる方から、someteが衣服を回収して染め直してプロダクト化し、それらをDtoCブランド的に売っていくことにも挑戦したいと思っています。これも、ユーザーインタビューの中からヒントを得て、次のアクションに繋がりました。
また、中にはインタビュー相手の方が雑誌の編集者の方で、インタビュー経由で取り組みのことを知っていただき、雑誌掲載につながることもありました。

ー青野さんは、買う人側だけでなく染める工房側の開拓もする必要がありましたが、歴史ある伝統工芸のコミュニティの中にどう飛び込んでいかれたのですか。
someteさんのサービスを理解してもらうのは難しかったのでは?
青野:全国の工房をリストアップして片端からメールを送りました。“肌感”で反応のありそうな方とは直接電話をしてサービスの説明もさせていただきました。HPを持ってSNSを運用している工房さんや、新しい取り組みをされている方とは蜜にコミュニケーションを取らせていただき、現在は4~5社を中心に染め直しの依頼をしている状況です。
ープログラム全体を通して、事業を続けられた秘訣みたいなものはありましたでしょうか。
青野:STARTUP STUDIO by Crewwに採択されると、毎月Crewwさんからのフィードバックをもらう月次ピッチがあるのですが、それがかなりモチベーション維持に繋がっていました。外部でのピッチの場を提供していただいたのも、非常に大きかったです。露出できる機会はなかなかないので貴重でした。
他にも、Crewwさんのオープンイノベーションプラットフォームを活用させていただき、都市型商業施設「OPA」のアクセラレーションプログラムに応募。共創案のディスカッションやプレゼンテーションを経て、何とか採択いただくことができました。事業の立ち上げから、グロースまでCrewwさんにお世話になってばかりで、頭が上がりません。笑
someteのこれから
ー今後どんな方にsometeのサービスを利用してほしいですか?
青野:ミレニアル世代とZ世代に利用していただきたいです。理由としては、環境問題に対してもとから高い関心が備わっている層という印象があるからです。「環境を意識したブランドを購入することで応援する」というようなマインドをすでに持っているのではないかと。
ー最後に、今後の展望について教えて下さい!
青野:アメリカでは、コロナ禍で倹約思考が高まったことで、古着を購入する方が増えたというデータもあります。「古着を一着買うなら、染め直しも一着いいんじゃない!?」そんなブランディングをしていけたらと。someteのサービスを通じて「衣類ロス」という課題を解決したい、特に家庭から出る衣類ロスは、まだ着手しきれていない分野であるという印象なので、我々はそこにチャンスを感じています。また、someteの利用者が増えれば、ロス衣類も減少し、工房さんもより潤う。そんなサスティナブルな世界を実現できたら嬉しいなと。
ー売る・捨てる以外の選択肢として「染める」someteのサービスが普及していくといいですね。
青野:はい。someteは、課題解決型であるだけではなく価値創造型のサービスでもあると思っています。我々の取り組みについての啓蒙活動にも力を入れつつ、丁寧かつスピーディーに顧客や市場、そして社会とコミュニケーションを取っていき、社会課題を解決していけたらと思っています!
社名 | 株式会社Play Blue |
設立 | 2022年3月18日 |
代表者 | 青野祐治 |
URL | https://somete.jp/ |

大学卒業後、ファッション系広告会社や大手広告会社を経てフリーランスのPRプランナー/編集者に。 その後、スタートアップでオウンドメディアの編集等を行う傍ら、循環型地域経済に興味を持ち、 2018年に複業で地元のローカルストーリーメディアを創刊。 地場野菜のストーリーを“一杯のカレーで味わえる”「カップカレー」のプロデュースや地元の未来を考えるトークイベントを主催。 ローカルメディアの活動から得た経験をきっかけに複業として『染め文化の継承』と『衣類ロス削減』を目指すサービス「somete」を立ち上げ。 Startup Studio by Creww、渋谷QWS、OPAアクセラレータープログラム2021 にプロジェクト採択。Gaiax Startup Studio 起業賞受賞。
◆インタビュアー◆
Creww株式会社 Talent Team Biz Dev. / STARTUP STUDIO運営
寺田 麗未 氏
https://twitter.com/remiterada
