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※この記事は、2019年10月23日、Story Design houseがDeepTech Impactにて公開した記事を転載しています。
スタートアップ業界にもブームがある
9月には『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』という書籍が発売され、話題になっています。
また、2019年10月26日号の「週刊ダイヤモンド」の特集は「5年で大化け!サイエンス&ベンチャー105発」。見出しの言葉こそ違っていますが、ディープテックを正面から扱った内容です。
そもそも、ディープテックとはなんでしょうか。 まだ定義がはっきり定まっていない言葉ですが、下記のような特徴があるといえます。
interpoint (interword separation)大学や研究機関などで培われた技術をコアに構築されたビジネスモデル
・事業化してマーケットに出るまでに、莫大な投資を必要とする
・成功したあかつきには、世の中に大きなインパクトを与えうる事業

これまでのスタートアップ業界では、初期投資が少なく、事業化までの期間が短いWebサービスへの投資が目立っていました。
しかし現在はその逆ともいえる、ディープテックを武器に起業するスタートアップへの注目度が上がっています。VC(ベンチャーキャピタル)による、ディープテック領域を投資対象としたファンドの設立も増えてきました。
スタートアップにはお金も時間も必要
何度かのベンチャーブームを経験し、日本におけるスタートアップへの投資は、この数年でようやく盛んになり始めました。
ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、大企業がCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立する流れが出てきたのは2012〜13年頃から。日本企業がCVCなどを通じてスタートアップに投資した金額は、2018年には1300億円を超えました。2017年の2倍近くに増えたようです。
スタートアップ、特にディープテック・スタートアップが成長するためには、お金も時間も掛かります。たとえば、超小型人工衛星によるビジネスを展開するアクセルスペース。2013年に世界初の民間商用小型衛星を、2019年にはJAXAと提携した小型衛星を打ち上げるなど、躍進を続けています。いまでこそ、アメリカのスペースXや、堀江貴文氏のインターステラテクノロジズの成功によって宇宙ビジネスは認知されてきました。
しかし、アクセルスペースが創業した2008年当時は、スタートアップが宇宙ビジネスに挑戦することは一般的ではありませんでした。アクセルスペースを創業直後から支援してきた組織のひとつに、TEP(TXアントレプレナーパートナーズ)があります。大学や研究機関などの先端技術を持ったディープテック・スタートアップを、エンジェル投資家が支援する組織です。
研究とビジネスのあいだには、果てしなく遠い距離があります。どんなに素晴らしい技術であっても、それがビジネスとして実現できるかは別の話です。
遠く離れた両者をつなぎ、社会を広げる仕組みが必要とされています
ディープテックにフォーカスしたイベントが多数開催
世界各地で開催されている、スタートアップが一同に会するイベント。フィンランドで2008年に始まり毎年開催されているSlush、2016年からフランスで開催され始めたVivaTech、さらにシンガポールのEchelon Asia SummitやTech in Asiaなどが広く知られていますが、その舞台は日本にもあります。
私たちStory Design houseでは、先述のTEPをはじめ、ディープテックに関わる団体や企業、イベントの広報PRをお手伝いしています。たとえば、毎年柏の葉キャンパス地区で開催されるアジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)。アジアのディープテック・スタートアップが集結するイベントです。日本でベンチャー支援がさほど活発ではなかった2012年から開催されています。
また、台湾を拠点とする非営利インキュベーター組織 Garage+(ガレージ・プラス)も、彼らがハブとなって日本企業と世界のディープテック・スタートアップをつなぐ動きを進めています。2019年にはGarage+の日本企業向けメンパーシップクラブ Asia Startup Express / 亜州創業特急 がスタートしました。
期待されている日本
AEAもGarage+も、世界のディープテック・スタートアップが日本に集まってくるイベントです。日本はマーケットとしてまだまだ魅力的。また、海外からの日本企業の技術力への信頼度は強く、協業によって大きなイノベーションを生み出せるのではないかという期待があるようです。CVC投資が増え、日本企業がオープンイノベーションに積極的になってきたことで、海外のディープテック・スタートアップが進出しやすい環境が醸成されつつあります。
Garage+代表のジョセフィーヌ氏は、「日本のモノづくりへの知見は深く、また距離的にも心理的にも台湾と近い。アジア経済の発展を目指す長期的なビジネスパートナーとして、積極的に連携していきたい」と語っています。
日本には課題先進国であるという側面もあります。少子高齢化による労働力不足など、これから世界が直面していく課題をディープテックは解決できるのか。その技術が市場にマッチするか、ビジネスとして成立するかは、実際に試してみないとわかりません。日本企業との協業によって挑戦的なサービスが展開されることも期待されます。
ディープテックは世界を変えるのか
インターネットは世界を大きく変化させました。そしていま、ディープテックが世界を変えようとしています。5Gなどの通信インフラや、AIを活用したコンピューティングなど、あらゆる技術が急速に進化しています。IT産業だけでなく、既存の産業構造にも技術革新の流れが訪れ、大きなインパクトを生み出す可能性が大きくなっている。それは従来の産業全体のアップデートにつながっていきます。
まったく新しい産業が創造されるときは、すぐそこまで来ているのかもしれません。
