目次
今回は、オープンイノベーションのメリットについて説明。成功させるポイントや導入事例も紹介します。
・オープンイノベーションを自社に導入するメリット
・自社でオープンイノベーションを進めるデメリット
・オープンイノベーションを成功させるポイント
・オープンイノベーションの導入事例
・オープンイノベーションプラットフォームを活用する
・オープンイノベーションの成功ポイントを理解して導入を進めよう
オープンイノベーションを自社に導入する必要性

オープンイノベーションは2003年にアメリカで提唱されて以来、多くの企業から注目を集めています。オープンイノベーションと対極の言葉にはクローズドイノベーションがあり、従来から日本企業の主流を占めていた考え方です。
ここでは、オープンイノベーションとクローズドイノベーションの違いについて見ていきながら、自社にオープンイノベーションを導入する必要性について紹介します。
オープンイノベーションとは?
オープンイノベーションとは、外部の組織・研究機関などから開発や技術のノウハウを取り入れていくという考え方です。イノベーションとは「改革」という意味で、内部の改革のために外部の資源を積極的に活用するという意味が込められています。
これまで、日本の企業は自社の資源や技術だけを使って商品を作るという「自前主義」が主流でした。
これら従来からの自前主義は、今日のデジタル経済の進化において限界がきているとされています。これまでは自社の内部で済んでいた企業活動も、生産性を高めるには外部からの調達が必要になってきているのです。
オープンイノベーションに対し、クローズドイノベーションという言葉もあります。クローズドイノベーションは社内に限定してイノベーションを起こすという考え方ですが、内部に限定した取り組みでは近年の加速した技術進化に対応できず、市場の変化に乗り切ることができなくなるでしょう。
自社にオープンイノベーションを導入すべきか
市場が成熟してグローバル化が進む現代、顧客のニーズは多様化しています。付加価値の高い製品やサービスでも、市場の活性化により価値が下がる「コモディティ化」が顕著です。
このような時代の変化により、従来の自前主義では対応できないケースも少なくありません。
変化の激しい市場に対応していくためには、オープンイノベーションの推進が求められています。日本では大企業を中心に取り組みが進んでいますが、世界的規模では立ち遅れているのが実情です。自社単独での開発が60%を超えるなど、自前主義の脱却はあまり進んでいません。
解決すべき社会の課題に対応できるイノベーションシステムの構築が必要であり、そのためには、自社でオープンイノベーションを導入することが必要といえるでしょう。
参考:経済産業省「イノベーション政策について」
オープンイノベーションを自社に導入するメリット

オープンイノベーションは経済環境の変化に対応するため、多くの企業に求められる経営戦略です。オープンイノベーションを導入することで、自社にはない技術やリソースを活用でき、新しい分野への事業推進も図れます。また、異なる企業文化に触れることは、自社の人材育成にも役立つでしょう。
ここでは、オープンイノベーションを自社に導入するメリットについて紹介します。
協業先の技術やリソースを活用できる
自前主義のもとで新たに商品を開発する場合、人的コストがかかり、生産プロセスも長期化します。しかし、オープンイノベーションを導入することで協業先の技術やリソースを活用できるようになり、効率的な研究開発が可能です。開発・生産過程の短期化やコストダウンが実現し、新たな商品・サービスを生み出す可能性が高まるでしょう。
さらに、共同の研究開発や協業により相乗効果を生み出し、市場の活性化にもつながります。得られた技術やリソースは協業のプロジェクトでの活用にとどまらず、自社の人材育成や組織の成長にも役立つはずです。
事業推進のスピードアップができる
オープンイノベーションにより人的・時間的なコストが削減されることで、事業を推進するスピードが高まります。自前主義では採用が難しかった戦略も打ち出せるようになり、変化していく市場のニーズに応えることが可能です。
自社のみでは対応できなかった分野にも進出できるようになり、新規事業の開拓で企業価値を高めることもできるでしょう。
異なる企業文化に触れることができる
オープンイノベーションは、異なる企業文化と接触できるのもメリットです。連携先の企業と協業することで人的交流が進み、自社にはないアイデアや発想、価値観、仕事の進め方、課題解決の手法などに触れることができます。
多様な企業文化との交流は刺激となり、柔軟な発想を持つ人材の育成や組織の活性化に役立つでしょう。多様化する顧客ニーズや価値観に対応する力も高まります。
自社でオープンイノベーションを進めるデメリット

メリットの多いオープンイノベーションですが、デメリットな側面があることも認識しておかなければなりません。デメリットを把握しておくことが、リスクを抑えながらオープンイノベーションを効率的に推進するポイントです。
ここでは、情報漏洩や技術流出のリスク、協業によるコミュニケーションコストの増大といったデメリットについて紹介します。
技術流出のリスク
オープンイノベーションとは知識や技術、情報に対する社内外の境界をなくし、自由に出入りさせることでイノベーションを創出するものです。外部から取り入れるだけでなく、社内の知識や技術の流出を伴います。そのため、どうしてもアイデアや技術が流出するリスクは避けられません。
リスクを回避するためには、人材や協業の拠点などの環境について十分な打ち合わせが必要です。また、データの管理などセキュリティ面でのルールも厳重に定めておく必要があるでしょう。
コミュニケーションコストの増大と利益の減少
異なる企業文化との接触は、メリットばかりではありません。協業する組織とは「報告・連絡・相談」といった基本的なビジネスフローが異なることも多く、プロジェクトにおける意思疎通にはコミュニケーションコストが増大します。自社内部で行ってきた手順にこだわらず、柔軟に対応していくことが求められるでしょう。
また、協業により利益率が低下する場合があることも、把握しておく必要があります。複数の組織でプロジェクトを行うため、得られる収益も分配する必要があるからです。ただし、オープンイノベーションによる人的・時間的コスト削減があるため、必ずしも利益率が減るとは限りません。
アイデアや開発した技術に対し、どちらがどれだけ貢献したかはわかりにくい部分もあるでしょう。トラブルにならないよう、事前に分配の割合を定めておくことも大切です。
オープンイノベーションを成功させるポイント

これまで自前主義により長年、内部での開発・製造を行ってきた企業では、オープンイノベーションに慣れない部分も多いでしょう。オープンイノベーションの取り組みを成功させるためには、押さえておきたいポイントがあります。
知的交流の場を設けるなど、オープンイノベーションを成功させるポイントについて見ていきましょう。
知的交流の場や研究会を主催する
オープンイノベーションを始めるには連携先の企業を探すことが必要ですが、それと並行して、知的交流の場や研究会を開催することが成功の秘訣です。場を設けることで、自社が課題とするテーマに関心のある人材や組織との接点ができます。
そのためには、自社内のリソースについての調査も必要です。社会で必要されている技術やリソースは何かを考え、自社が提供できる、他にはないコアな技術・得意分野は何かを見極めます。
交流の場で人材や組織との接点を見出す際も、自社の得意とする技術と合わせてどのような成果や価値を創り出せるかを具体的に見出すことができるでしょう。
自社のニーズを広く公開し、外部から解決策の提案を受ける
オープンイノベーションで自社に合う連携先を探す際は、自社のニーズや課題をできるだけ幅広く公開することが効果的です。
その際は、実際にどの範囲まで外部に公開するかを見極めなければなりません。オープンイノベーションの目的や自社の成長のため、どこまでの領域を公開するかの判断も必要です。
オープンイノベーションを進めるために必要な情報を選定し、外部からより多く解決策の提案が受けられるように準備しておきましょう。
オープンイノベーションの導入事例

ープンイノベーションは大企業を中心に、多くの成功事例があります。そのひとつとして、携帯会社の大手ソフトバンクの導入事例を見てみましょう。
ソフトバンクでは、2019年にパートナー企業と新規ビジネスの共創に取り組むプログラム「ONE SHIP」を開始しています。複雑化する社会の課題と専門化していくテクノロジーに対し、打ち出された戦略です。
自社が持たない部分を時間とコストをかけて育てるよりも、既に持っている企業と組む方が効率的と考え、「さまざまなリソースを掛け合わせて1を100にする」という発想のもとに展開されています。発足から日は浅いものの、2020年11月時点で170社が加入。いくつかのプロジェクトが実施されています。
関連記事:オープンイノベーション導入の成功事例
オープンイノベーションプラットフォームを活用する

これからオープンイノベーションを始める会社にとって、数多くの組織の中から自社に合う連携先を探すのは容易ではありません。そこで活用したいのが、オープンイノベーションプラットフォームです。
オープンイノベーションプラットフォームとは、オープンイノベーションを促進するため、連携先を探すサポートをするサービスです。民間企業が提供しており、法人同士のマッチングやプログラムの作成など、さまざまなサービスが展開されています。
プラットフォームのWebサイトではこれまでのオープンイノベーションの成功事例なども確認できるため、参考にしてみるとよいでしょう。
オープンイノベーションの成功ポイントを理解して導入を進めよう

顧客のニーズが多様化する市場において、オープンイノベーションの導入は競争力を高める上で有用です。外部の技術やリソースを活用して事業の推進を早め、新たな事業への参入で企業価値を高めることも期待できるでしょう。異なる企業文化との交流は、人材の成長にも役立ちます。
デメリットについても把握しておき、成功させるポイントを理解してオープンイノベーションを取り入れていきましょう。
