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候補物質について
新型コロナ患者に対する間葉系幹細胞を用いた臨床試験が国内外で実施されている中で、バイオミメティクスシンパシーズは、間葉系幹細胞により想定される新型コロナ感染症の治療メカニズムを解析することにより、転写因子FOXO1がACE2とTMPRSS2の遺伝子発現の制御に重要であることを見出した結果、FOXO1の阻害作用を持つ3つの治療薬候補物質の発見に成功した。
これらは、SARS-CoV2が自身のスパイクタンパク質を介して宿主細胞への侵入と感染を成立させるために重要な、宿主細胞の表面に存在するACE2とTMPRSS2の両方の遺伝子発現を抑制するという、非常に画期的なものである(図1)。これまでもACE2またはTMPRSS2のいずれか一方をターゲットとする薬剤は知られていたが、今回の発見はそれら両方を一剤で抑制することが大きな特徴である(図2)。
そして実際にキノロン系化合物Xは、in vitro試験においてSARS-CoV2のS1スパイクタンパク質の宿主細胞への取り込みを有意に抑制すると共に、マウスへの気管内投与においては、肺組織中のACE2またはTMPRSS2の遺伝子発現を抑制する傾向が確認されている。バイオミメティクスシンパシーズは、今後、SARS-CoV2感染実験など、医薬品開発に向けた評価をロート製薬と共同でさらに進めていく。
またインスリン及びHGFについても、キノロン系化合物Xと類似のメカニズムを介して、ACE2及びTMPRSS2の発現を同時に、且つ有意に抑制する作用を有することが確認されている。
ライセンス契約について
FOXO1阻害作用を有するキノロン系化合物Xについてライセンス契約をロート製薬と締結し、医薬品開発に向け共同開発を実施する。本技術を用いた事業化についても、ロート製薬と共同で検討していく。
共同での取組み 「RB+」について
再生医療研究から見出した新しいメカニズムから新型コロナウイルス感染症の治療薬候補を同定した手法を他の疾患の治療薬開発にも広げるために、バイオミメティクスシンパシーズとロート製薬は新しい研究開発組織「RB+」を発足する。「RB+」は、近い将来、間葉系幹細胞が対象とする多くの疾患に対する治療メカニズムについても解明し、従来知られていなかった創薬ターゲットを見出し、他の企業の参画も募り、オープンイノベーションによって治療薬の実用化に向けた動きを加速する共創プラットフォームである。
(図1)

(図2)

