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こうした急激な変化が起こっているポストコロナの時代にオープンイノベーションはどうあるべきなのか?オープンイノベーションの現状の分析とともに、将来的な展望を考察していきます。
コロナによってオープンイノベーションはどう変わりつつあるか?

オープンイノベーションとは外部の組織と連携して、その技術やアイディアを積極的に活用する手法です。組織の活性化、新事業の展開などを目的として、近年多くの企業で取り入れられてきました。通信大手のKDDIによるドローンやビッグデータなどの企業との共創もそうした例のひとつです。しかしコロナによってその流れには変化が見られます。現状はどうなっているのでしょうか?
オープンイノベーションの現状
コロナ禍の最中にあって、先行きが不透明であることから、スタートアップへの投資を中断したり、延期したりする企業が目立っています。つまり、オープンイノベーションの動きがにぶっているのが現状です。
ただし、オープンイノベーションが今後も停滞していくと予測されているわけではなく、一時期的に様子を見ている段階という表現が適切でしょう。むしろ社会構造の変化、個人の意識の変化によって、新たな産業が創出される可能性が高まることが予測されます。オープンイノベーションへの期待は今後、さらに高まっていくでしょう。
コロナによる産業構造の変化
テレワークの普及によって、ワークスタイルは大幅に変わりつつあります。その流れがさまざまな産業に波及していくのは間違いないでしょう。社会や経済の構造の変化に伴って、新たなニーズが生まれることが予想されます。新規事業の創出、社会の課題の解決など、オープンイノベーションの担う役割はさらに大きくなるでしょう。これまでと違って、すべての企業が同時にスタートラインに立ち、よーいドン!で走り出そうとしているのが現在の状況なのです。
新たな生活様式によって新たな産業が生まれていく流れはポストコロナの時代にさらに加速していくでしょう。
コロナ禍においてオープンイノベーションに求められること

コロナによって、ワークスタイルも生活様式も大きく変わりつつある今、オープンイノベーションに求められているのはどんなことなのか、考察していきましょう。
短期的な展望から中・長期的な展望へ
コロナによって、三密(密閉、密集、密接)を回避すべくテレワークが普及し、飲食店での営業が限定的になるなどの変化が見られました。ダメージを受けた産業がたくさんある中で、ネット関連、デリバリー、衛生製品などの需要が高まっています。
しかしオープンイノベーションに求められているのはこうした短期的な状況の変化に対応するものではなく、中期・長期的な状況に対応するものということになるでしょう。たとえば、オンライン化、自動化、省人化、遠隔化といった流れとマッチした産業のニーズが高まることが予想されます。
より本質的でより明確なものへ
コロナがもたらしたもののひとつは産業構造の急速な変化です。変化するスピードは確実に早くなっているといっていいでしょう。ゆっくりと変わっていくのであれば、試行錯誤しながら、じっくりオープンイノベーションを構築していけばいいのですが、急激な変化に対応するにはピンポイントでより明確なゴールを設定することが求められます。
新規ビジネスを立ち上げることをゴールにするのではなくて、新規ビジネスによる成果が、誰に対して、どのようなプラスをもたらすものであるべきか、ということまで具体的にイメージする必要があるのです。
コロナ禍が多くの人々にもたらしたものの中で、プラスの要素を持ったものをひとつあげるとするならば、何が本当に大切なものなのかを見つめ直す時間が増えたことでしょう。ニューノーマルの時代にはより本質的なものが求められる流れが顕著になることが予想されます。
産業もそうした意識に対応していく必要があるのです。より明確なものへ、そしてより本質的なものへ、不要となった事業から今後必要とされる新規事業へ、すみやかに人的資源も含めた経営資源を投入する必要があるでしょう。
オープンイノベーションのプロセスの変化

オープンイノベーションにおけるプロセスのパターンは大企業がプログラムを立ち上げて、連携するパートナーを公募し、選考の後、試験期間を経て、協業を開始するというのが一般的でした。しかしコロナはオープンイノベーションのプロセスにも大きな変化をもたらしています。具体的に見ていきましょう。
オンラインによるさらなるオープン化
オープンイノベーションにおいてもオンライン化が確実に進行しています。空間的・地域的な制限が取り払われることによって、より広い範囲での起業の組み合わせが可能になるのです。つまりオンライン化はさらなるオープン化をもたらし、オープンイノベーションの特質がより効果的に発揮される可能性が高くなります。
加速するグローバル化
オープンになるということはあらゆる規制がなくなるということです。国境という境界線も軽々と越えていくことになるでしょう。コロナによって、遠距離への人の移動は規制されるようになりましたが、企業間での距離は確実に縮まっているのです。将来的に求められるのはグローバルな視野を前提としたオープンイノベーション、ということになるでしょう。
ポストコロナにおけるオープンイノベーションの展望

ポストコロナにおけるオープンイノベーションはどう変わっていくのか、どうあるべきなのか、展望を見ていきましょう。
新たなイノベーションの萌芽
コロナによる社会構造や経済構造の変化、ニューノーマルの浸透によって、産業そのものの構造にも大きな変化が訪れることが予想されます。過去の歴史を見ても、新たなイノベーションの誕生は変化によってもたらされる傾向が顕著です。オンライン化、自動化、省人化、遠隔化と相性のいい産業、もしくはその傾向を加速させる産業の近くで、新しいイノベーションの萌芽はすでに始まっているに違いありません。
社会の要請に応えるオープンイノベーション
これまでのオープンイノベーションの大きなモチベーションのひとつは「世の中になかったものを作る、自分の作りたいものを作る」というものでした。ポストコロナの時代においては、「社会が必要としているものを新たに作る」というケースが増えていくことが予想されます。医療、衛生、少子高齢化、地方再生などの問題の解消の糸口を提供できるスタートアップやベンチャー企業への期待が高まるでしょう。
新たな産業を創出することによって、社会の問題や課題を解決する糸口を提示することができるならば、おそらく行政の協力を取り付けることもできるでしょう。ここに参加する人々や企業のモチベーションも高くなるはずです。未来のオープンイノベーションを考える上で、社会という視点はより重要なものになっていくに違いありません。
ポストコロナ時代では共に創る「共創」がさらに重要に

コロナがもたらしたもののひとつは日本国内のみならず、世界中の広範囲の人々がほぼ同時に、同じような体験や感情を経験したことでしょう。誰もが同じように不安や恐怖を感じて、先行きの見えない事態に困惑し、不自由を感じていました。
こうした共通体験、共通認識が新たなイノベーションを生み出していく上で、大きな鍵になっていく可能性はきわめて高いといっていいでしょう。共感や共有が人と人、企業と企業をつないでいく上での大きなポイントになることが予想されます。ポストコロナ時代のオープンイノベーションでは共に創る「共創」がさらに重要になっていくでしょう。
