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最近の若者だってやればできるんだ
神奈川県横浜市で生まれました。人と違うことをするのが好きな性格でした。小学生のとき、本棚を作る授業で、クラスのみんなが先生が説明した通りに作る中、普通にやるのは嫌だと思い背面の板の形を変えてアレンジしたものを作りました。自分のオリジナリティを加えたいと思っていましたね。
中学、高校で化学が好きになり、一浪して化学分野でトップの大学に進学しました。
大学に入り、ある漫画を読みました。その漫画には、学生運動があった時期に京都の大学生達が夜の大文字山に登り、懐中電灯を使って山に「大」という文字を映し出した「大文字点灯」について描かれていました。また、そのでき事が起きた頃は、若者にエネルギーが満ち溢れていたが、最近の若者には元気がないと書かれていました。
それを読んで、まるで自分たちのことが否定されたような気がして、カチンときました。今の若者だって元気があると証明したいと思い、漫画と同じように夜の大文字山で「大」の文字を点灯することにしました。
友人に声をかけ、大学の内外でチラシを3000枚まいて、参加を呼びかけました。しかし、携帯電話が一般的でなく、留守番電話に当日までに参加連絡をくれたのはたったの5人。このまま、人が少なくて、できなかったらどうしようと不安でいっぱいでした。
点灯当日、ドキドキしながら集合場所に行くと、なんと120人も集まっていて驚きました。自分の声掛けでこんなに人が集まってくれるんだと、うれしかったですね。
無事「大」の文字を作ることができました。最近の若者だってやればできるんだと思ったのと同時に、周りの人を巻き込んで、一緒に成し遂げる喜びを感じましたね。
支えてくれている人たちのために
大学卒業後は大学院に進み、合成化学の研究をしました。研究する中で、もともと自然のものだった物質が、プラスチックなどの化合物になると自然に分解されなくなり、地球を汚してしまうことを知って違和感を覚えるようになりました。このまま化学物質の研究を続けても、どんどん地球を汚してしまうと思ったんです。
地球に優しい化学の使い方を探すうちに、植物の分解を助けることでエネルギーを取り出す、バイオマスエネルギーの分野に興味を惹かれるようになりました。就活の時期になると、バイオマスエネルギーの研究開発を行なっている会社をいくつか受け、たった一社だけ受かった東京ガス株式会社に就職しました。
入社して数年が過ぎ、家庭用商品の企画部に異動しました。異動してすぐ、商品が実際にどう使われているのか見るための研修として、お客様の自宅でガスの安全点検をする作業員に同行しました。
すぐ隣で作業の様子を見ると、作業員は安全点検だけでなく、プラスアルファの業務も行なっていました。お客様からの機器の使い方の質問に答えたり、古くなったコンロのバーナーの掃除をしたりしていたのです。そんな姿を見て、現場の人たちは、真心を込めた接客をしているんだななと感動しました。現場最前線のこの人たちが、普段から会社の顔として誠実にお客様と接しているから、会社が掲げる「安心・安全・信頼」のイメージが保たれているんだと思い知らされました。そして、コツコツと仕事をする彼らが、きちんと評価される会社にしたいと思いました。
また、研修を通して、お客様がどんな暮らしをしているのか、自分の目で見て知ることができました。決して裕福ではないものの、節電しながら暮らし、その中でガス料金を滞納をせずにちゃんと支払いをしてくれている。また、こっちがお邪魔しているにもかかわらず、「いつもありがとうございます」と声をかけてくださる。そんな姿を見て、自社のサービスを愛し、感謝してくださっている方々のためにも、安定して良いサービスを提供できる会社でありたいと強く思いました。
頼ってくれるお客さんの期待に応えたい
異動して2年ほど経った頃、会社の製品であるガスエアコンが絶品になることが決まりました。絶品とは、商品や商品に使われているパーツの生産をストップすることで、修理の対応ができなくなります。電気エアコンが普及し、需要が減ったことと性能に差が出てしまったことが絶品になった理由でした。
そのことをお客様に伝えるため、絶品のお知らせをするダイレクトメールを10数万件ほど送りました。
すると、お客様からお叱りの電話が来たんです。契約の時点で、絶品になる可能性があることは説明していましたが、電話口で「あんなにいい商品だと言ってたじゃないか」「絶品にされては困る」と言われました。お客様の中には、ガスエアコンを家の天井や壁に埋め込んで設置されている方もいて、その対応をなんとかして欲しいと言われることもありました。そんな電話が3カ月ほど続き、精神的にしんどい日々が続きました。
しかし、研修のときに見た自社サービスを利用されている方の顔が浮かび、とにかくわかってもらうまでコミュニケーションを取ろうと決めました。
時間をかけて説明すると、多くのお客様に理解していただくことができました。改めていいお客様に支えられてるなと実感する一方、商品を買ってくれたお客様に残念な思いをさせてしまったと、申し訳なさを感じました。今後は、自社を信頼してくれている多くのお客様のためにも、期待に応えられるサービスを提供したいと思うようになりました。
公平、公益なサービスを
絶品の連絡対応が落ち着くと、今度は企画部へ異動し、しばらくは国と一緒に未来のエネルギー事業のあり方を考える仕事をしていました。
その後、東京ガスの持つ、人や店舗やお客様のネットワークといった資産を使って新規事業開発を行う部署に配属され、チームを任されました。同時に、スピード感を持って新しいサービスを開発するため、スタートアップ企業など社外の技術を持つ企業との協業も始めることになりました。
最初は、スタートアップ企業がどんな仕事の仕方で、どんな人たちが働いているのかを実際に接する中で肌で感じ、勉強しました。
半年後、実際に他社と協業してサービスを作り始めました。様々なアイデアが部署の内外を問わず出てくる中、新しいサービスを作るうえで大切にしていたのは自社でやる意味です。
これまで生活のインフラとして誰にでも公平にサービスを提供してきたという誇りがあるので、高所得者の人たち等の一部のお客様だけに届けるサービスではなく、多くの人が利用可能な公平性と公益性を兼ね備えたサービスづくりをしたいとも思っていました。
2年ほど新規事業の立ち上げを経験した後、今度はデジタル技術を使った新規サービスの開発に特化した、新しい部署の立ち上げメンバーに選ばれました。
真面目に働く人が評価される社会へ
現在も、顧客基盤やチャネルといった自社の強みを活用した新しい事業の開発に取り組んでいます。
プロジェクトメンバーと新しいサービスを組み立て、思っていた通りの価値をお客さんに提供でき、お客様にご満足いただけたとき、非常にやりがいを感じます。狙い通りにいった満足感や、パートナーと一緒になって成し遂げた達成感を感じるのです。
協業する上で特に心がけているのは、パートナー企業のお手伝いをさせてもらっていると意識することです。例えば自社が関わることで協業先の企業が提供するサービスの規模を拡大させることができる場合もあります。しかし、発注が増えて生産が追いつかなくなればこれまで、やってきた仕組みが回らなくなってしまいます。そんな状況を防ぐため、我々主導でものごとを考えないようにしています。
また、若手社員を集め、社内のサービスや新規プロジェクトの内容を共有する勉強会も開催しています。きっかけになったのは、新入社員が言っていた「会社はいろいろやってるけど、配属されたら一つの部署のことしかやらなくなるんですよね」という言葉でした。そんなふうに思われているのがもったいないと感じ、他部署の話を聞く機会を作りたいと思ったのです。
勉強会では、自社の取り組みやサービスについて、取り組んでいる人から話してもらったりしています。新規事業のアイデアを共有し、意見をもらうこともあります。実際に勉強会を通じて知った新しい事業に取り組みたいと、部署を異動した人もいます。
今後も、新規事業づくりに携わっていきたいです。特に、真面目に、誠実に行きている人たちが正しく評価され、得をするサービスが作れれば良いなと考えています。例えば、海外で生まれ、日本でも利用されるようになったタクシーの配車サービスでは、ユーザーが利用後にドライバーの評価をつけ、その評価が報酬金額に繋がります。そんな、一生懸命働く人が評価されるサービスを社外の企業と一緒に生み出していきたいのです。
将来的には自ら作り上げた事業の経営をやってみたいとも考えています。今だと、我々は支援をする側で、実際にサービスの構築や提供を頑張っているのは協業先の企業たちです。そこで、自分が事業を経営する側に回り、お客さんの生の声を聞いたり、実際に苦労して初めて得られる喜びを味わったりしたいと思っています。
事業の創出を通して、真面目に、誠実に生きている人たちが認められ、評価される世の中を作っていきたいです。
※このインタビュー記事は、2019年5月6日、Another life.This is a reprint of an article published in

東京ガス株式会社・リビングサービスプロジェクト部事業開発グループマネージャー。入社後、研究部門の触媒開発、技術・商品企画、総合企画を経て、現在はスタートアップ企業と協業しながら、デジタルサービスの新規事業開発を行っている。 ※この記事はCreww株式会社の提供でお送りしました。

This is a life experience service operated under the concept of "living your own story. By reliving other people's lives, we want people to learn about various ways of living and to have an opportunity to think about themselves. We want to increase the number of people who can find what they want to do in their own way, accept various values, and create a bright future together. We operate with this in mind.