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発足から3年になるOICが事業創出のプロセスとオープンイノベーションという切り口で5回に渡り「事業創出虎の巻セミナー」を開催している。第3回目のテーマは「事業プランニング」。各社が新規事業を作っていくにあたり、どのような課題にぶつかり、どういった工夫をし、クリアしていこうとしているのかを共有することで、明日の新規事業に活かしてもらうことを目的にセッションが実施された。
凸版印刷株式会社 小泉 寧氏-
株式会社デジタルガレージ 松田 信之氏-
凸版印刷の新規事業のミッションとは?
小泉:我々の部署は「印刷とは全く関係の無い、非連続の新規事業をやること」がミッションです。既存事業の中で、新市場を開発する。あるいは既存市場で今まではエントリーしてなかったけれども、新たに新規事業を会社としてやってみる、ここもオープンイノベーションで出来る部分です。ただ我々は非連続の新規事業をやってるので、具体的に社外のリソース分析をしないと何も始まらないRight?
成長中の分野やディープテック、食糧・農業、あるいは健康医療、ロボティクスやバイオなどは、印刷会社としては経験がない分野なので、基本的に自社リソースはありません。なので、こういった分野を手がける社外リソースを分析することが必要となります。
“ミッシングパーツ”を補うために
宮川:ミッシングパーツを補うためにやることは、基本的3つ考えられます。
1つ目:「自前でやる」The following is a list of the most common problems with the
2つ目:「オープンイノベーションにより共創する(大企業・ベンチャー)」The following is a list of the most common problems with the
3つ目:「M&A」あるいは「事業締結」The following is a list of the most common problems with the
大抵この3つに選択肢は絞られるのではないでしょうか。
小泉:「自分たちで自前でできない」というお話をしましたが、ミッシングパーツがあることが理由です。大企業の場合は特にテクノロジー分野での新規事業になると、スタートアップ企業と組んで足りない部分を補い、事業開発テーマを事業化させていくことが多いかもしれません。事業開発テーマありきの新規事業の場合は、このパターンが多いですね。
優れたテクノロジーあるいはビジネスモデルを持っているスタートアップ企業はたくさんいらっしゃいます。「これ素晴らしいね。我々は参入していない分野だけれど、やりたい事業だよね」ということであれば、そのテクノロジーを活かした新規事業案を新たに組み立て、各部門へ提供、展開していきます。いろんな事業案を考えていく上で、「事業ごとに妄想してみること」がすごく大事でないかなと思います。

経営資源を集めたい 社内外にどうアピールすべきか?
− 凸版印刷は、2013年にシリコンバレーに事務所を立ち上げていますね。「新規事業を担当していると、スタートアップ企業と組まないと何もできないと思うようになりました。」とのことですが、社内外にどうアプローチして新規事業を展開していったのでしょうか。
小泉:シリコンバレーのファンドに出資をするという決断をして、上層部に掛け合ってお金を引っ張りました。ものすごい反対を受けたんですけれども、これはやらないと次の成長はないということで、説得しました。
凸版が行くと「印刷会社何しに来たの」という反応がほとんどでした。ですので、まずは会社の理念をわかってもらうのが先決でした。そして徐々に、実際にこうやりたいんですっていう話をします。
結局キーとなるのは、「経営戦略的にキャッシュジェネレートできない場合は撤退する」という選択です。ただ、 なかなか新規事業はお金生みませんので、経営資源が集められないんです。
既存事業を維持成長させるKPIと新規事業を作り出すためのKPIは 全く違うのだ、ということを経営層に何回も繰り返し言うしかないです。
失敗を共有できることが成長戦略だと思って、リスクテイキングすることが大事だと思っています。そして、この中でマネタイズできる人がこれから求められる人材ではないかなと思っています。
凸版印刷のオープンイノベーション事例
小泉:実際に凸版印刷が手がけているオープンイノベーション事例は、スマート農業だったりスマートエネルギー、VR、AR、 ビッグデータ 、AI、フィンテック、自動運転、宇宙ビジネスと多岐にわたります。日本やアメリカのテクノロジーやビジネスモデルを見て、発想、着想、技術世界最先端の動きを見聞きしますThe following is a list of the most common problems with the
・コネクト:競争する技術を募集するオープンイノベーション
・オープンイノベーションラボの運用:社内でビジコンを開催し、ピックアップして事業化する。また、実案した人間を部署に呼ぶ
・日本ギャラリー:観光立国を共創するスペース
小泉:まずは会う。様子を見つつ、協同で事業開発をし、あるいは出資する。というプロセスで進めています。
実証実験の検証内容とは?
現代の有効な実証実験の形には一体どんなポイントがあるのか。小泉氏のあげる実証実験の検証内容ポイントは3つだ。
①テクノロジーそのものが技術レベルでどうなのか
②検証して効果がきちんと出たか
③実現性具現性が本当にあるのか
上記の内、特に3点目については、クローズドでやってしまうとうまくいかなくなると小泉氏は続ける。
小泉:社会実装型ですね、もう実際に社会に組み込んでスモールスタートしてみたほうが良いです。実運営に近い環境で検証する時代になってきているのではないでしょうか。イノベーションの劇的変化をリサーチしつつ、社会実装型イノベーションを模索する。あらかじめ仮説を立てて検証しながらチューニングをすることがとても大事だと思います。
自社単独でやるのか、協業であるのか、クライアント巻き込みながらやるのか。
他力でやるのか自力でやるのかという見極めもまた大事だと思います。
注目は深セン!自治体と組む社会実装型イノベーション
「特に自治体と組んで実証実験をし、社会実装していく。という流れが、今後大事になってくると思います。」そう話す小泉さんが次に注目している都市、それが深センだ。今アジアのシリコンバレーと呼ばれて、注目されるホットな街である。
小泉:香港の近く、1時間半ぐらいで電車で行ける都市です。バスタクシーも100%電気自動車。それと超監視社会ということで、いたるところにカメラがあって犯罪はほとんどありません。
<深センの特徴>
・世界有数のイノベーションシティで14億人が後ろに控えるエコシステムがある。
・経済特区で政府に優遇されている。
・誰でも起業してみんなでイノベーションしようと行政が後押しをしている。
・60%で既製品をカットオーバーしその中で検証しながらの社会実装型イノベーションができる。(日本と違いシリコンバレーと類似する)。
・実際の都市で実験が出来る。とても規制が緩い。
小泉:今中国に起きていることすべてに共通していることはAIとビッグデータ。データを取られることに抵抗がないです。深センは 設計、開発、視察、量産が出来ますし実証実験も出来ますし事業開発もできる。ですのでリサーチ実証、自作というようなことがこれから考えられるのではないかと思っております。
小泉:最後に。失敗を共有できることが成長戦略だと思ってリスクテイキングすることが大事だと思っています。変わることにはリスクを伴いますが、変わらないことにはより大きなリスクを伴うという風に考えております。

デジタルガレージの事業プランニング
◇新規事業の成功率
松田氏は、こんな数字を挙げた。 Googleによればベンチャーキャピタルから出資を受けた企業家が成功する確率15%、ユニクロの柳生氏による新会社の10年後の存続率5%、ベンチャー企業が 大手VCの出資の依頼数を100%とした場合に最後 イグ ジットまで行ける確率0.1%。
松田:我々が意識しないといけないことは、「新規事業は普通に行ったら基本的には失敗する」ということです。それぐらい難しいことに取り組んでいるんだっていう意識は非常に大事なのかなと思っています。
◇新規事業、現在のトレンドは?
10年前にはなかった新規事業の方向性とは何だろうか。松田氏の経験則から大企業の意識は以下の様に変化したという。
・自社の技術だけではなく、ベンチャーを含む外部と連携し新しいものを作りたい!
・同業他社の調査はもういらない!国内外の大企業、他の会社もしくはベンチャー等新しいことをやっている人たちの情報が欲しい。
・むしろ会社の名前は出したい!もしくは、顧客に見せてみてアイディアをいただく等連携共同開発を進めたい。
◇新規事業が陥りがちな罠3つ?!
NG①セールスの丸投げ
松田:既存市場に対して新しい製品を出したいと思った時によくあるのが、ニッチ化です。結構もう掘り尽くされているので、その中で新しい商品を出して行こうとすると、ものすごい狭いニッチ商品になってしまう。もうすでに売れ筋の商品がズラッとある中で、小さい商品を出しても営業部が売ってくれない。
営業部が売ってくれない問題は非常に大きく、一生懸命に企画部が考えたとしても営業に渡したらカタログには載せてくれたけど全く売ってくれなくて売れない。というケースはよくあると思います。
「良い商品作りました!マーケティング調査もばっちりなので、売るだけです。後は営業部よろしく。」これもなかなかうまくいかないパターンです。
NG②安易なプロダクトアウト
Matsuda:既存製品で新規事業に展開していこうという場合、往々にしてあるのが競争力不足です。日本もアメリカでもそうですけど成熟した市場になっているとユーザーの要求レベルがまず高いです。また多くの領域でそれ専門の強力なプレイヤーが存在していることが多い。非常に細かい現場のニーズにマッチした商品っていうのは既に世の中にあるんですね。これって一般の違う業種にいるとわからないことなので、安易に新しい市場に参入すると火傷もします。
NG ③机上のマーケットイン
Matsuda:新商品で新規事業を狙う時に陥りがちなのが、どの企業も狙う市場が同じというものです。成長市場で市場規模も大きい。で、自社のリソースが使える。非常にロジカルな分析だと思うんですけれども、そうなってくると日本の場合はシニア市場ですね。今後も増えますよね。介護市場も増えること分かっています。注意しないといけないのがどの会社も同じ情報で分析するから同じ結論なんです。
◇新規事業は“国語算数理科社会”の順番で!

松田:では新規事業どうやってやるのか、私のお勧めがこちらです。
国語算数理科社会、皆さん馴染みのこの言葉。石川明さん(リクルートのRINGというビジネスアイディアコンテストをやられていた方で、All Aboutの立ち上げをされた方)のフレームです。これは何を言っているかと言うと新規事業はこの順番で考えましょうっていうことなんです。
①国語… ○○ くんはこの文章を読みなさい、○○ くんはどういうことに困っていますかっていう国語の問題に答える。誰がどんな不満を抱えているのか、どういう風になったら嬉しいんですかっていうのをまず考えましょうということです。
②算数…国語で見つけた不満がどれくらい重いものなのか、どれくらいの頻度で生じるのか、グロスでどれくらいの数がいるのか、そういう数字的な話をしましょうということです。
③理科…この負をですね解決する技術や方法を考えましょうということです。どういうやり方をすればこれが現実に社会に出せますかっていうことです。
④社会…最後に負に関する規制などを考えましょうということです。世の中規制が変わってそのビジネスができなくなるとか、ノックアウトファクターとして一応こういうことも確認しましょうということです。
松田:結構逆から考えてしまうケースが多いんですね。たとえば、日本市場の統計を見ると老人が増えています。うちの会社には特殊な技術がありますと。それを使うとこれくらいの人にサービスが提供できます。で、それはこういう価値があるんです。
国語算数理科社会は上からやることが大事なんです。なぜかというと、プロダクトアウトで考えるんじゃなくて世の中の誰に対して何を届けるのかこれがしっかりしていないと後ろが全て机上の空論になっちゃうからです。最初に理科の話したらダメです。
◇オープンイノベーション スタートアップと組む魅力
小泉氏講演にもあった通り自社だけでは限界があり社外リソースを活用するオープンイノベーション。ビジネスアイデアコンテストやアクセラレーターに限らず業務提携も協業もリスクもあるわけだが…
松田:スタートアップ企業は、技術、市場とも未知数の領域に挑戦して、大企業ができないことにチャレンジしている。そこにやっぱりスタートアップとしての良さというのがある。また、アクセラレーターは、ミッシングピースを埋めてもらう為に大企業が主体となるものである一方で、主にセレンディピティ、創出をしていなかったものと出会えるところがポイントであり、結果そのものよりは、参加者とのコネクションというのも重要な価値になってきます。
◇新規事業成功の秘訣は?!
最後にメッセージとして、松田氏により、前述の失敗する典型3つを成功に近づけるために、いくつかのポイントが紹介された。
ポイント①素早く
底的な想定顧客ヒアリングであり、プロトタイプをぶつけることでプロダクトをどんどん作り込んで改善していく、これを素早くやること。
ポイント②机上のマーケティングは1時間で終わらせる
本当にお金を払ってまで使いたいと思う人を見つけること。それがちゃんとビジネス規模になるようにきちんと市場を定義して、それに合うプロダクトにしていくということ。
ポイント③事業として成立するバリューチェーンの構築
商品を作るだけで営業部に売ってと言っても、そのバリューチェーンがなかったらそもそも成立しない。営業メッセージや販売キットの選択肢まで準備した上で営業にお願いすると結構動いてくれる。販売までの道筋を企画することが重要。

凸版印刷株式会社入社、主に事業戦略部門や事業開発部門に従事、平成18年から出資先の株式会社イーフォーシーリンク社外取締役を兼務、平成25年シリコンバレー駐在事務所立ち上げ。
平成28年から平成30年まで経産省IoT推進ラボの先進的IoTプロジェ クト選考会議選定委員を務める。
現在はオープンイノベーションによる非連続領域(未踏分野)の新規事業開発に従事。

オープンイノベーション推進室室長
大学院在学中に学習塾向けコミュニケーションプラットフォームを提供するベンチャーを共同設立。
2008年3月、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。
2008年4月、株式会社三菱総合研究所入社。
2014年7月~2015年6月、スタンフォード大学米国アジア技術経営センター客員研究員。
2019年4月〜株式会社デジタルガレージ OnLab推進部 副部長
民間企業の新規事業戦略・新商品/サービス開発に係るコンサルティングの経験を活かし、近年ではスタートアップと大企業、自治体などを巻き込んだオープンイノベーション支援にも携わる。

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