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金曜日, 10月 22, 2021

広島発 日本全国、浸水被害ゼロを目指したオープンイノベーション|建材メーカーの「防水ボックス」を広告媒体に。

広島県と広島銀行は、広島県が行っているオープンな実証実験の場「ひろしまサンドボックス」内の取り組みの一つとして、「広島オープンアクセラレーター」を実施。県内に新たな事業の創出を目指し、多様な事業領域の県内企業と、全国のスタートアップを結びつけている。このプログラムでマッチングした事例の一つが、グレーチングメーカーとして国内トップシェアを誇る株式会社ダイクレと、インターネット広告事業などを展開している東京のスタートアップ・株式会社カンバイだ。ダイクレが開発した「防水ボックス」を広告媒体にすることで、全国の防水被害ゼロを目指している。具体的に、どのような取り組みを進めているのか、ダイクレ企業戦略室 室長の山本晃大 氏とカンバイ代表取締役の丸山高範 氏にお話を伺った。

業界の常識にとらわれて、新製品を生み出せないジレンマ

―ダイクレの事業や強みと、今回アクセラレータープログラムに参加した背景について教えてください。

山本 1951年に建築資材メーカーとして創業以来、ダイクレは「グレーチング」の国内トップメーカーとして『人にやさしい』『地球にやさしい』をキーワードに、さまざまな製品を開発してきました。

グレーチングとは、道路の排水溝に掛けられている格子状の蓋などの構造材のことです。
排水溝の蓋以外にも多様なグレーチング製品を開発しています。他メーカーとの違いは、法面工事に使用するグリーンパネルのような工期短縮や人手不足解消に寄与し、防災・減災、災害復旧に貢献する製品を提供していることです。

またそういった新製品の開発などにおいて「失敗を恐れずチャレンジする」という精神を会社として掲げていることです。このような企業風土が現在の事業規模にまで成長ができた背景にあると自負しています。

今回ダイクレがアクセラレータープログラムに参加したのは、既存製品の延長線上にある製品は作れているものの、自前では新しい発想による新規事業や新製品を生み出し世に普及させることができていないというジレンマがあったためです。業界の常識や「できる」「できない」に囚われてしまうと、どうしても凝り固まった思想の範囲内でしか発想が生まれませんでした。

加えて、新しい事業や商品の「企画検討」までは進んでも、実行されずに終わってしまったケースが過去にたくさんあったため、外部のプログラムに則る形で他社と協業すれば、社内に新規事業や新製品を企画して実行するまでのノウハウを残し、今後に生かせるのではないかと考えました。

全く被らない異業種と協業できるのが、アクセラレータープログラムの価値

ダイクレが参加したHIROSHIMA OPEN ACCELERATOR(広島オープンアクセラレーター) 

―今回、ダイクレの募集に、東京のスタートアップであるカンバイが応募されました。応募の理由を教えてください。

丸山 応募のきっかけは、私の地元である広島県が初めてアクセラレータープログラムを実施することを知って、地元に貢献したいと思ったことでした。

カンバイはインターネットを中心とした広告事業や訪日インバウンド事業などを展開しているのですが、ダイクレさんが持つ資産と掛け合わせたら、新規事業を立ち上げられるのではないかと考えました。

―ダイクレがカンバイを採択した理由は何でしたか?

山本 本業とはまったく被らない領域で事業展開をされていたからです。近しい業界の企業からの応募もたくさんいただきましたが、それはわざわざ今回のアクセラレータープログラムでやらなくても、いつか協業のチャンスがあるかもしれません。

普段から、工場や技術部隊が協業を検討している近しい業界とは全く違う業界の方が、新しい発想で新しい価値を作れるのではないかと思いました。

実際、丸山さんに商品カタログを見ていただいてお話をするうちに、「防水ボックスを広告媒体にしたらどうだろう」というアイデアが生まれたんですね。

もともと建物の浸水被害を防ぐために、防水ボックスを日本全国に広めたいという強い思いはありましたが、他の主力製品に比べると低調で……。これに広告媒体という付加価値をつけられるなら、世の中に広めていける可能性があると感じました。

防水ボックスを広告媒体に。全国から浸水被害をなくしたい

―あらためて、防水ボックスについて教えていただけますか?

山本 普段はプランターや傘立てとして使用でき、大雨の際には複数のボックスを連結させると止水板として活用できる箱型のプロダクトです。

防災製品は高額なものほど防水性能が高まるため、たとえば地下鉄の入り口には工事を伴う「防水板」が導入されています。しかし、店舗や事業所に防水板版を導入するのは現実的ではないので、一般的な浸水対策として、土のうを使用されるケースが多いと思います。

ただ、土のうを使ったことのある方ならわかると思いますが、土のうに砂を入れて積み上げるのは簡単ではありませんし、使用後の廃棄にも手間がかかってしまいます。だから、防水板より低価格で、土のうより防水効果があって手間がかからない製品として、防水ボックスを開発しました。

この防水ボックスを起点にカンバイさんと考えたビジネスモデルは、防水ボックスを広告媒体にして、製造コストを広告主からの出稿料でまかなうことで、設置する店舗には購入費用がかからない仕組みです。

丸山 商業施設の入り口に看板などの広告を出すのはNGなことが多いのですが、入り口に設置しても違和感のないプランターや傘立てが広告媒体になれば、施設側からも設置OKをいただきやすいですし、入り口付近は広告価値が高いため、広告主としても広告を掲載したい場所になるんですね。更にいざという時の防水機能があって普段使いもできる防水ボックスにより、これまで出せなかった場所に広告を出せるなら、事業化に期待ができるのではないかと思いました。

山本 日本全国から浸水被害を減らすために、防水ボックス導入のハードルを限りなく下げたかった我々の思いと、今まで広告を出稿できなかった店舗の入り口に広告を掲出できる利点が、見事に合致しましたよね。

これから実証実験なので、まだ全国の店舗に無料で置くような段階にはありませんが、浸水被害に遭われた方、懸念されている方には、土のうよりも止水性能が高くて、防水板よりも安価なものを無料で導入できる未来に期待して欲しいです。

業界が違うと、言葉も感覚も商習慣も違う

―アクセラレータープログラムを進める中で、壁になったことや難しかった点はありましたか?

丸山 課題になったのは2つあって、1つは広告としては目線が低いこと。プランターや傘立てでは、広告が目に入らないのではないかという懸念がありました。そこで、さまざまな検討を重ねた結果、防水ボックスの側面に広告を掲出するだけでなく、防水ボックスを土台にしたデジタルサイネージ広告のアイデアが生まれました。

もう一つは、施設側が止水したい場所と広告主が広告を掲載したい場所が一致しない可能性があることです。誰に対して広告を訴求できるかは、今後展開する上で大きな課題になります。そこで、まずは顧客やニーズを絞りやすい大手ドラッグストアの入り口に設置することで、広告効果を測りたいと考えています。

山本 プロジェクトを進める上で、社内調整に時間がかかるなどの困ったことはなかったのですが、業界が違うと言葉も感覚も商習慣も違うことを知りました。そもそもカタカナが苦手な会社だから、最初は「リーチする」という言葉も知らなくて、とにかく勉強が必要でした。

丸山 私も同じで、今まで無形商材しか扱ってこなかったから、メーカーが物を作って売る概念や感覚があまり深く理解できていませんでした。勉強をしながら協業を進めていますが、真逆に位置する業界同士だからこそ、たくさんの刺激を受けています。

デジタルサイネージ広告×防災ボックスは、浸水被害ゼロへの挑戦

―今後の展開について教えてください。

山本 2020年11月から、首都圏にあるドラッグストア「クリエイト」の30店舗で、デジタルサイネージ広告×防災ボックスの実証実験を始めます。オペレーションに問題はないか、広告効果はどうだったのかを確認しながら、5店舗、10店舗、15店舗と3段階に分けて実施する予定です。

この実証実験で、防災だけでなく販売促進にも寄与することが実証できれば、2021年4月以降から本格的な運用と横展開を実現させて、事業化につなげたいと考えています。

そして目指すのは、浸水被害を受けた方や、今後受ける可能性のある地域の方に、無償もしくは安価で防水ボックスを使用してもらうための環境を整えること。浸水被害をゼロにするための挑戦だと思っています。

丸山 現在考えている防水ボックス×広告の形状や、防水ボックスの製造コストを広告出稿料で賄うビジネスモデルだけでは、防水ボックスを全国の小売店に導入してもらうのは難しいと考えています。

だから、時間をかけてでも実証実験で形状やビジネスモデルをしっかりと検証して事業化し、全国の店舗や事業所の浸水被害ゼロにつなげられたら嬉しいです。

社名株式会社 ダイクレ
所在地広島県呉市築地町1番24号
設立1951年(昭和26年)5月
資本金4億6千万円
代表取締役社長山本 浩
事業概要建設事業(土木事業・建築事業)及び開発事業
URLhttp://www.daikure.co.jp/
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田村 朋美
2000年雪印乳業に入社。その後、広告代理店、個人事業主を経て、2012年ビズリーチに入社。コンテンツ制作に従事。2016年にNewsPicksに入社し、BrandDesignチームの編集者を経て、現在はフリーランスのライター・編集として活動中。
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